太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2022年10月04日

日本エアロゾル学会の機関誌「エアロゾル研究」に三浦理事長の研究室の査読付き論文が相次いで2件掲載されており、富士山頂の「新粒子」の新しい研究報告として注目されています。
今回は、三浦和彦理事長に執筆をお願いしました。
・9月20日、「エアロゾル研究」に
木村駿、五十嵐博己、三浦和彦、森樹大、岩本洋子、加藤俊吾、大河内博、和田龍一、夏季の富士山頂における新粒子の雲凝結核への成長、エアロゾル研究、37(3)202-211(2022)doi:10.11203/jar.37.202
が掲載されました。
この論文は3月20日に「エアロゾル研究」に掲載された
・五十嵐博己、森 樹大、三浦 和彦、岩本 洋子、大河内 博、和田 龍一、加藤 俊吾:夏季の富士山頂における粒子数濃度の経年変化、エアロゾル研究, 37(1), 36-44(2022)doi:10.11203/jar.37.36、
の続編です。

・東京理科大学のグループは2006年から2019年まで夏期のみですが旧富士山測候所においてエアロゾルの粒径分布を測定しました。前半の論文では直径15-470nmの粒子の粒径別数濃度の経年変化を報告しました(図1)。
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図1 粒径別粒子数濃度の経年変化(五十嵐ら(2022)Fig.3)。14年間に昼、夜ともに約3分の1に減少している。

この14年間に約3分の1に減少していました。特に気体が化学反応でできた(新粒子生成)微小粒子の減少が著しいこと、また、日中、夜間とも減少していることがわかりました。エアロゾルは太陽放射を直接散乱・吸収することで直接的に、また雲の種(雲凝結核)となることで間接的に気候へ影響します。二酸化炭素とは逆に地球を冷やす効果があります。エアロゾルが減少しているということはこれまで二酸化炭素による温室効果を相殺してきた分がなくなるので、より一層の温暖化対策をする必要があります。今後もエアロゾルの観測を継続することが重要です。

・エアロゾル粒子の全てが雲凝結核になるわけではありません。後半の論文では、爆発的に粒子濃度が増加する新粒子生成でできた微小粒子がどれだけ雲凝結核の大きさまで成長するかの報告です。2014年から2019年のデータについて調べたところ、新粒子生成イベントの約50%で雲凝結核が増加し、最大約7倍まで増加したことがわかりました(図2)。これらの原因についてイベント毎に考察しています。
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図2 新粒子生成イベントがある時のエアロゾルの粒径分布の日変化(上)と雲凝結核数濃度(N80)の日変化の例。赤い箇所が濃度が高いことを示す。8時すぎに増加した小さい粒子が雲凝結核まで成長している。雲凝結核数濃度がイベント前の約7倍まで増加している。(木村ら(2022)Fig.2(a))

・これら二つの論文は東京理科大学の修論、卒論を発展させたものですが、本研究は多くの研究者・学生さんの協力を得て行われました。また、NPOを支えていただいている理事の皆様、山頂班・御殿場班の皆様にもご協力をいただきました。共著者は論文を完成する上で一緒に解析、議論したメンバーに限らせていただきましたが、この場をお借りして皆様にお礼申し上げます。

以上、三浦理事長の原稿を掲載させて頂きました。
(広報委員会)



認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

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