太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2023年11月

washingtonpost

大河内副理事長の富士山頂でのマイクロプラスチック観測研究はついに米国Washington Post 紙にも掲載されました。

2023年11月2日7:30に配信されたこの記事は
「最近、マイクロプラスチックが、思いも寄らない場所で見つかった。
小さなプラスチック粒子が富士山上空の雲の中から発見された。研究者によれば、これらは気候に影響を与える可能性があるという。」Maggie Penman記者による丁寧な解説が行われています。

以下に記事を要約します。
プラスチックはどこにでもあり、人類は80億トン以上のプラスチックを生産していますが、リサイクルされているのはその10%にも満たず、プラスチック廃棄物は簡単には分解されないため、何百年もの間、環境中に存在し、どんどん小さくなり、私たちの食べ物や体、環境にまで入り込んでしまいます。

これらの微粒子が人間にとってどれほど有害であるかはまだ正確にはわかっていませんが、プラスチックに含まれる化学物質の中には、生殖、ストレス反応、免疫反応、発育を妨げるものもあると考えられています。海洋中のマイクロプラスチックは海洋生物や鳥類を脅かしており、哺乳類に関する研究は少ないですが、ラットやマウスを使った研究では深刻な害が指摘されています。

大気中にプラスチックを発見
この研究(Environmental Chemistry Letters、21, 3055–3062 、2023)の著者の一人である大河内博教授は、富士山上空の雲にマイクロプラスチックが検出されたことに驚きはなかったと語ります。「大気浮遊マイクロプラスチック(AMP)に関する初期の研究では、雨水を含む大気降下物にマイクロプラスチックが含まれていることを発見していました」と大河内氏は電子メールで述べています。

大河内教授らは、微小粒子が雨水に含まれているのなら、雲の水にも含まれているはずだと考えました。これを研究するのは簡単ではありませんでした。富士山環境研究センターは富士山頂の遮るもののない、最も高いピークの上(剣ヶ峰)にあり、研究者たちが登山者や山小屋の影響を受けずに雲水のサンプルを採取できます。彼らは富士山頂(3776m)で夏期の間にサンプルを採取しましたが、雲の密度に応じて数時間ごとにサンプルを採取しています。

研究チームは、雲水中のプラスチックについて化学分析を行いました。その結果、透明な食品ラップ、買い物袋、洗剤ボトルなど、多くのプラスチック製品に使われている物質を発見しました。そして、後方流跡線解析という手法を用いて、プラスチック粒子がどこから来たのか、そもそもどのようにして雲の中に入ってきたのかを調べました。

「後方流跡線解析の結果、富士山頂で採取された雲水に含まれるAMPは、主に海洋からの輸送によるものであると思われます。」というのが結論です。

影富士
大気中マイクロプラスチックの形状について
今週 Nature Geoscience 誌に掲載された新しい論文によると、プラスチック粒子はその形状が重要で、その形状が大気中をどれだけ遠くまで移動できるかに重要な役割を果たしているとのことです。コーネル大学の大気科学教授で、この研究の著者の一人であるNatalie Mahowld氏によると、球形の粒子なら、地上への落下により失われるという事実があり、観測結果と一致しません。

そこで、コーネル大学の研究者グループは、これらの粒子の多くが球形ではなく、リボンのような形をしている可能性があると考えました。このような平らな形状であれば、粒子が膨大な距離を移動し、人里離れた場所にたどり着けることを説明できるでしょう。

研究者たちはモデルを用いた研究で、リボン状の粒子は球形にくらべて450%以上長く大気中に留まることができるため、はるかに遠くまで移動できることを確認しました。研究者たちはまた、観察されたマイクロプラスチック粒子の大半が平らであることも見つけました。

大気中マイクロプラスチックの気候影響について
この、新しい研究の著者たちは、雲にマイクロプラスチックが存在することは、まったく新しい問題を引き起こすかもしれないと警告しています。昨年 Nature Geoscience 誌に発表された別の論文では、空気中のマイクロプラスチックが気候に与える潜在的な影響について、より深く掘り下げています。

著者の一人の、チューリッヒにあるスイス連邦工科大学の大気・気候科学研究所で実験大気物理学を担当しているZamin Kanji 氏は「これらの粒子は非常に小さく軽いため、高高度まで運ばれます。...ここで、雲の形成に関与する可能性があります」と述べています。

大河内氏はまた、上層大気中の強い紫外線が浮遊プラスチック粒子の分解を促進し、メタンや二酸化炭素のような温室効果ガスを放出する可能性も指摘しました。
「これは地球を温暖化させる効果があります」とのことです。

「もし雲の中にプラスチック粒子があれば、その周りに水が凝縮して水滴ができ、もし雲の中にプラスチック粒子があれば、その周りに水が凝縮して水滴ができ、また、上層大気中の強い紫外線が浮遊するプラスチック粒子の分解を促進し、メタンや二酸化炭素のような温室効果ガスを放出する可能性もある」と大河内氏は指摘しています。つまり、地球を温暖化させる効果があるということです。

大河内、Kanji 両氏は、海水中のマイクロプラスチックの濃度は、海水温の上昇に伴って上昇する可能性があるとことを指摘しています。一方、大河内氏もKanji氏も、雲中のマイクロプラスチックの濃度は、気温や降雨量に大きな影響を与えるには低すぎるとも指摘しています。

「数十年後には問題になるかもしれません。」つまり、影響を緩和する時間はまだあるというこです。「私たちが行動を共にし、現在の大気の清浄化を促進し、継続的な環境汚染を抑制することで、このような事態を食い止めるチャンスがあるのです」と述べています。”
以上のように、本年のトピックスとして、大河内副理事長の大気中のマイクロプラスチック研究は広く世界に知られるようになりましたが、富士山の観測がその一端を担っていることは、本NPOとしても誇らしいことです。

(広報委員会)


認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

毎年恒例となっている英国で開催されるCTR Wilson会議。
本ブログでも2021年2022年と過去2回の様子を報告しています。
※1927年にノーベル物理学賞を受賞したCharles Thomson Rees Wilsonを記念して2013年に設立されたもので、大気電気にかかわる研究については世界でも有数の場です。

2023年の会合は、オンラインではなく、英国南西部のバース(Bath)大学で行われました。
1日だけの会合ですが、英国を中心とした大気電気の専門家が集まり、熱心な議論を行います。

今年は、本NPO雷チームからは鴨川専務理事1名が現地参加しました。
富士山に関係する内容の発表はありませんでしたが、
参加者の発表の中に、アルメニアの独立峰アラガツ山の雷活動の調査の報告がありました。
初期報告ではありましたが、山岳領域では雷活動が平野部に比べて活発であることが示されています。
同じような標高で独立峰である富士山でも同様な研究を行う予定の本NPOの雷グループとしては
気になる発表でした。
次年度以降に、富士山での雷活動の特徴を話す機会が出て来るのではないかと思います。

IMG_7751

市全体が世界遺産でイギリス唯一の温泉地であるバース。
蜂蜜色のバース石で造られた建物が建ち並ぶ街並みが美しい。

IMG_7774

参加者の活発な議論。

mtfuji_s

2022年7〜8月の富士山の落雷図。
このような図を今後はたくさん書いていくことになると思います。(文責:鴨川仁)


認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは

2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かかるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)のです。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

本NPO富士山測候所を活用する会の夏期観測は、例年7〜9月上旬まで有人で行われます。
この期間は、山頂班の常駐によりいわゆる100 Vの電源を使うことができます。それ以外の期間(春や秋も含めて冬期期間と定義しています)では、無人の観測を行っています。この期間では、いわゆる100 V電源を使うことができませんので、バッテリーや太陽光パネルによる運用を行います。冬期期間の参画グループには、温暖化ガスの観測(国立環境研究所)、火山ガスの観測(東京都立大学)などがありますが、本年は、当会の自主事業として越冬のライブカメラ(動画ではなく静止画のみ)実験を行うことになりました。

越冬での難しさは、電源だけではありません。データ通信も技術的に難しく、たとえ静止画を撮ったとしてもデータを送ることは限られたバッテリーの電力では難しいのです。

そこで本NPOは以前よりLPWA通信と呼ばれる超低消費電力で低データ容量ですが遠距離通信ができるデータ通信技術に注目し、数々の実験をしてきました。今回、越冬ライブカメラを実験するにあたっては、このLPWA通信に注目し、静止画のデータを送る試みをしました。LPWA通信には規格が多数ありますが今回注目したのはプライベートRoLaという規格です。

今回、エヌエスティ・グローバリスト社の製品を導入し、太陽光パネルを富士山測候所の窓に備え付けて、バッテリーも並列し、8月下旬に設置をしました。

IMG_6739
 屋内での設置の様子。火山ガスの越冬観測装置(金属枠)の左横に本体が設置されています。

IMG_6672
 カメラは南西方向に。太陽光パネルも設置。

IMG_6700
 設置カメラの視線方向。本写真はiPhoneのカメラで撮影。

IMG_6750
 LPWA通信のデータ受信局は、御殿場観測点に。

IMG_0338
無事に通信が成功し送られてきた静止画。夕日を見事とらえています。

本システムでは1時間に1枚ごとの画像が送られてきます。越冬期間においても富士山からの静止画が見られるのは感激です。

本事業はYahoo!基金の支援によって行われております。

(広報委員会)

認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは

2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

今回は、富士山環境研究センター・源泰拓・特任研究員による投稿ブログです。

毎年、11月中旬にCTR Wilson Meetingという大気電気研究の会議が英国で開催されます。2022年は、11月24日にオンラインで行われました。本研究会は、大気電気研究にも多大な貢献をした英国の偉大なノーベル賞物理学者C. T. R. Wilsonにちなんで名付けられています。

本NPOからは、2021年は鴨川専務理事、富士山環境研究センター藤原特任研究員、源特任研究員が参加し研究成果を発表しています。昨年(2022年)は、鴨川専務理事が参加し「100 年近く続く柿岡・地磁気観測所大気電場観測の後継事業」について講演しました。これは、1929年から行われていた気象庁による大気電場の観測が2021年2月末に終了したことを受けて後継観測のプロジェクトを立ち上げた、そのいきさつを紹介したものです。

IMG_0535
 気象庁地磁気観測所(柿岡)に設置されていた大気電場観測器。2021年2月末で停止された。
(鴨川専務理事提供)

観測終了の情報を得たのは2021年1月でした。幸い、観測を実行していた気象庁地磁気観測所の協力を得て、静岡県立大学と気象庁との共同研究という形で、観測を継続できることになりました。

s-Photo 11-06-2021 11 32 11
 気象庁地磁気観測所(茨城県石岡市)での後継観測装置設置作業


鴨川専務理事のグループによる大気電場の観測は、富士山頂でも行われています。厳しい条件下で得られたノウハウを活かして、大急ぎで機材とデータ処理の準備を行い、データの中断を免れることができました。

思えば本NPOも、気象庁が観測を終了した富士山測候所の活用を目的として発足したものです。”観測の継続”を続けること自体がなかなかむずかしくなっている昨今ですが、自然現象の観測では、二度と同じデータを得ることはできません。データの価値をあげるためには、研究成果を論文として出すことと、それをわかりやすく紹介すること、両方が必要です。
今年も富士山環境研究センターからの成果を発信できるよう、精進してまいります。

IMG_0534
 Zoomには多数の参加者が。2023年の本会議は対面で行われる予定です。

なお、本研究は、2023年10月に、Geoscience Data Journalにて英文査読論文として発表されたことをご報告申し上げます。
(文責:源 泰拓)

人手不足、コロナ禍などにより縮小される継続観測が増えている昨今です。
地道に続けられた地磁気の観測データが継続され、生かされてていること、
それが世界的な論文誌に認められたことは嬉しいニュースです。
本NPOの活動を通してのこれからの研究の発展が楽しみです。
(広報委員会)

認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは

2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かかるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)のです。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

本NPOにとって、夏期観測期間中のライブカメラによる動画配信は、もはや恒例行事と言っても良いかもしれません。CHO&Company社MORECAのカメラを1号庁舎屋根に東向きで設置し、御来光をライブで見れる環境を皆さまに提供できることは設置・運用に携わるスタッフにとって喜びの一つです。

IMG_4752
 設置時の風景。2023年は旧測候所開所の次の日7月2日に設置しました。

このライブカメラは、YouTubeでリアルタイム配信を行なっており、Live  Chatを見ると多くの常連の皆様がしばしば楽しく会話しています。

IMG_5707
 御来校直前の早朝でも、Live Chatにはメッセージが。

YouTubeに配信される動画は、MORECAに内蔵されているLTE回線で動画が配信されています。そして、MORECAにはSDカードも内蔵されており、LTE回線が不通の時も動画は収録されています。またLTE回線が悪天候などで不安定で低画質しか配信されない時でも、SDカードには2K画質の画像が収録される仕組みになっています。我々は夏期観測終了後にこのデータを回収し、運用した約2ヶ月の期間における名場面を切り出し、YouTubeに動画として順次アップしています。

IMG_0537

名場面を切り出しています。皆さんには富士山の多彩な風景を楽しんでいただきたいです。
こちらの映像はどなたでも見ていただけます。
チャンネル登録もお願いします。

IMG_0538
 夏期観測期間中にはYouTube Shortでも配信。多数の御来光動画が。

現在YouTubeの登録者数は2100を超えており、ライブ配信が行われる夏期期間以外でも楽しんでいただくため今後も努力していく次第です。

また、本NPOの会員の皆様には、会員特典として夏期観測中ライブカメラで撮影した24時間フル映像をご覧いただけます。
ぜひ、会員になってご支援をお願いします。
入会のお申し込みはこちらから
https://npofuji3776.org/help/join.html


(広報委員会)


認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは

2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

↑このページのトップヘ