太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2024年02月

2024年は元旦の能登半島地震というとんでもない内陸活断層型の地震発生という事件から始まりました。被害に遭われた方の復興を願うばかりです。
能登半島は周辺を海に囲まれていますが、基本的には”陸”の地殻構造となっています。前回のブログで、これまで最大と言われていた 1891年の濃尾地震とほぼ同じ規模の地震であった事をお伝えしましたが、能登半島地震はプレート沈み込みに起因する地震(東日本大震災や、南海トラフの巨大地震、関東大震災等の震災を引き起こした地震)以外では、最大級の地震であったという事なのです。
次の図は2023年に発生したマグニチュード(M)6以上の地震をすべて図示しました。全部で18個が 発生しましたが、そのうちの5個が M6.5以上を記録しました。これら5個については図中に発生日時等の情報を記載しています。

スクリーンショット 2024-02-03 14.21.51

2023年5月5日には、能登半島で M6.5の地震が発生し、最大震度6強を記録しました。さらに12月28日 には択捉島沖で M6.6の地震が発生していますが、これはプレート境界の沈み込みに伴う地震のため、 結果として5月5日の能登の地震が昨年最大の内陸地震となりました。
2023年の特徴として、フィリピン海プレートの内部で地震活動が活発であった事かもしれません。特に10月には、M6クラスの地震が頻発し、突然の津波注意報が発令されるといった事件がありました。こ れらの地震は火山活動と関係している事もわかってきました。特殊な噴火が海底で発生し、地震の規模に比較して、大きな津波が発生した事が解明されつつあります。

次の図は2000年から2023年に発生した M6.5以上の地震の一年ごとの発生数です。

スクリーンショット 2024-02-03 14.23.25

2011年は東日本大震災が発生したため、非常に地震活動が活発であった訳ですが、それ以外の年には消長はありますが、特にどの年の地震活動が活発であったという事では無いように見えます。
これは台湾や北方領土といった、かなり広い領域について解析しているためで、2000年には三宅島の噴火をはじめとする激しい群発地震活動がありましたし、2016年には熊本地震が発生しています。2024年がどのような 年になるかはわかりませんが、能登半島地震という過去最大級の内陸活断層型地震の発生は、まさに南海トラフの巨大地震に向けた中長期の前駆的な地震活動の始まりと言えるのではないかと考えています。

それでは小さな地震を含めて2023年の地震活動を振り返ってみましょう。次の図は気象庁が観測したマグニチュード2以上で深さ300kmまでに発生したすべての地震をプロットしてあります。色の違いが地震発生の深さの違いを意味しています。
この図の中には24,128個の地震が図示されています。つまりマグニチュード2以上の地震は一日あたり平均して60個から70個も発生しているのです。地震というものは小さな地震ほど沢山発生しているという事をまず知って頂ければと思います。

2023M2-all

(文責:長尾年恭)


(広報委員会)

***************************
富士山測候所を活用する会では、ウェブサイトにて寄付を募っています。主旨や活動にご賛同いただけましたら、ぜひご支援をお願いします。

また、会員を募集しています。
会員特典として、会報誌『芙蓉の新風』(年1回発行)の送付、富士山頂郵便局スタンプ付きの暑中見舞いをお送りするなどの他、ウェブサイトの会員限定ページでは、山頂からのライブカメラ画像のアーカイブをはじめとするコンテンツをご覧いただくことができます。

ご寄附はこちらからお願いします
※ 銀行振込、クレジットカード、PayPal、その他(SoftBank、Tポイント)がご使用できます

ご入会はこちらからお願いします

aera20240122
 AERA 2024年1月22日号 朝日新聞出版ウェブサイトより
AERA 2024年1月22日号の巻頭特集は「能登半島地震が突きつけた現実」です。
1月15日発売のAERA1月22日号は「能登半島地震」について総力特集。真冬の能登半島を襲った震度7の巨大地震が突きつけた「現実」とはなんなのか、耐震化率、避難生活での災害関連死、デマ問題、活断層などさまざまなテーマで取材しました。地震列島に生きる私たちが日常から備えるために必要な情報を網羅しています。
AERA 2024年1月22日号 朝日新聞出版ウェブサイトより
巻頭特集「巨大地震が示した現実」のトップは
編集部・野村昌二記者による「耐震、避難所、今できること」:
震度7、真冬の能登半島を巨大地震が襲った。いつかは「起きる」と考えていても、事前の対策は極めてむつかしい。日常を見つめなおして、備えを。
AERA 2024年1月22日号より
とはじまります。

なぜ7階建てのビルが倒壊し、壊滅的な住宅被害が起こったのか:
まず「耐震化率」が低い地域であったこと。
耐震震度は、1981年に改正された「新耐震基準」以前が「旧基準」と、2000年にさらに改正された「2000年基準」がありますが、
「大規模建物の都道府県別耐震化率」(2022年、国土交通省好評)評価が全国平均90.1%を大きく下回るのが、
石川県75.0%、富山県68.1%です(福井県100%、神奈川県94.3%)
特に、珠洲市(51%)、輪島(46.1%)と住宅の耐震化も遅れています。

耐震化が進まない理由として長尾年恭理事(静岡県立大学客員教授)の話が紹介されます。
経済的理由が一番大きい。耐震化の必要性はわかっていても、耐震化による効果は目に見えません。例えば、耐震化に100万円を使うなら車を買ったほうがいいと思ってしまう。車は買ったその日から役に立ちます。高齢者が多い過疎地ほど、もう必要ないと思い、耐震改修は進みません
AERA 2024年1月22日号より
しかし、
命を救うためには耐震化が最重要です。
家が壊れないことで、火事が起きず、命が助かり、被災後の暮らしにも困りません。また、耐震化して高断熱化住宅にすると、ヒートショックなどによる冬の死亡増加率が低くなることも分かっています。
AERA 2024年1月22日号より
耐震化が進まない現実と、しかしその大切さは防災アドバイザーほか多方面の専門家から強調されます。

長尾理事はさらに
住宅の一部だけでも補強するのも効果があります。
寝室だけでも補強したり、寝床の上をフレームで覆う防災ベットを置いたり、家屋が倒壊しても寝室だけでも守れるようにすれば命を守る上でも意味があります。
AERA 2024年1月22日号より
とつづけます。

まとめとして、市町村が先頭に立って、今回の地震を教訓に「親子で実家の耐震化を考える」ことの必要性を論じています。

見開きページ
 AERA 2024年1月22日号より

さらに地震関連記事としては
[eyes]
 災害に対する国策が貧困な日本-トマホークよりも救助ヘリを(姜尚中)
特集記事
「トイレ問題は健康に直結」(渡辺豪記者)
「後を絶たないデマ情報の投稿」(福井しほ記者)
「原発30キロ圏内に激震地、避難計画は絵空事」(添田孝史記者)
「想定していた最悪の事態が起きた」(川口穣記者)
と続きます。
いずれも読みごたえのある内容です。

直後の地震報道に加えて、少し時間をおいて、このようなデータを駆使した記事の役割が改めて再認識される特集です。ご一読をお勧めします。
(広報委員会)

***************************
富士山測候所を活用する会では、ウェブサイトにて寄付を募っています。主旨や活動にご賛同いただけましたら、ぜひご支援をお願いします。

また、会員を募集しています。
会員特典として、会報誌『芙蓉の新風』(年1回発行)の送付、富士山頂郵便局スタンプ付きの暑中見舞いをお送りするなどの他、ウェブサイトの会員限定ページでは、山頂からのライブカメラ画像のアーカイブをはじめとするコンテンツをご覧いただくことができます。

ご寄附はこちらからお願いします
※ 銀行振込、クレジットカード、PayPal、その他(SoftBank、Tポイント)がご使用できます

ご入会はこちらからお願いします

↑このページのトップヘ