太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2024年03月

朝日新聞出版ニュースサイト AERAdot.(3月29日11:32配信)に
千葉県沖で多発する地震に潜む「リスク」  専門家が指摘する、巨大地震の「割れ残り」を刺激するシナリオ
と題して長尾年恭理事を取材した記事が掲載されました。

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 朝日新聞出版ニュースサイトAERAdot.より

千葉県東方沖で地震が多発している。首都直下地震との関連性を懸念する声も上がるが、政府の地震調査委員会などは「現時点で結びつくとは考えていない」と否定的な見解を示している。しかし、この地域は過去に大きな地震が発生した歴史があり、2011年の東日本大震災後から続く地震リスクも潜むとして、専門家が警鐘を鳴らしている。”
と始まる吉崎洋夫記者によるこの記事では、下記ような心配が指摘されています。

最近多発する千葉沖の地震について、スロースリップによるもので、震度5弱程度の地震が今後も起こる可能性があっても、首都直下型巨大地震と、直接結びつくとは考えていない
政府の地震調査委員会(委員長=平田直・東京大名誉教授)とはちがって、長尾理事は「もう一つの地震リスク」すなわち約40年周期で起こる地震について述べています。
スロースリップと巨大地震の関係は1995年以前のGPSデータが入手できないため、関連性についてはデータが無く、関係を証明できないため
国が言及できないのですが、今から37年前の1987年に最大震度5(M6.7)の大きな地震が起きており、その37年前の1950年には最大震度4(M6.3)、さらにそのに38年前の1912年にもM6.2の地震が起きていることを考えると、スロースリップが6~8回発生するとM6.5前後の地震が起きていた可能性がある…いうことです。

さらに、
千葉県東方沖には、巨大地震の際に動かなかった断層、「割れ残り」が二つあることを長尾理事は指摘します。

巨大地震はいつ起きてもおかしくない。最悪のシナリオを想定し、今からできる準備をしておくべきだろう」と終わる記事です。
詳しく知りたい方はぜひ吉崎記者の朝日新聞出版ニュースサイト AERAdot.記事をお読みください。


(広報委員会)
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最新の大気環境学会誌第59巻第2号に、入門講座「大気環境 むかし・いま」というシリーズの一部として、横田久司事務所長と土器屋由紀子理事の執筆記事が掲載されました。

入門講座「大気環境 むかし・いま」は、大気環境研究の歴史を振り返るために、大気環境に関する研究を牽引してこられた学会の名誉会員の先生方に、研究のきっかけ(経緯、歴史)、昔の観測手法や測器、観測・実験・共同研究のコツ、面白かったこと、苦労したこと、失敗談などを紹介してもらうシリーズだそうです。

記事の発行日は2024年3月10日で、偶然にも第17回成果報告会と同じ日でした。

 横田事務所長の記事は「第5講 使用過程にある大型ディーゼル自動車の排出低減対策について」です。
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 大気環境学会誌第59巻第2号より
横田事務所長は東京都環境科学研究所で長年大型ディーゼル車の排ガス研究に取り組んでおられました。車載計測システムによる排ガス測定方法の開発や、社会を変えた「アイドリングストップ」の研究、ディーゼル車からの粒子排出を減らすDPFの研究など、その経緯や成果、さまざまな人たちの出会いや、当時大きな転換期を迎えていた大気環境学会での事務局長としての仕事などが紹介されています。
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 東京都環境科学研究所の大型自動車実験システム(地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターウェブサイトより)
その中にこんな記述があります。

「石原慎太郎氏が都知事に就任した直後の7月、東京都環境科学研究所に視察に訪れた際、試験に用いたDPF装置とともに、ペットボトル入りの黒煙について説明した。当時の大型ディーゼル車から1kmの走行当たり約1gの黒煙が排出されていることを話すと、非常に驚かれた様子であった。このペットボトルは、知事が随所で見せていたのを覚えている方も多いだろう」。
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 2022/2/3 毎日新聞ウェブサイトより
この「黒煙入りペットボトル」を使った石原元都知事の記者会見は、首都圏でのディーゼル車排ガス規制のきっかけとして、日本の大気環境史で後世に伝えられるであろう1シーンです。日本の大気環境学の黎明期(1970年)から今日に至るまで、首都圏の大気環境の改善に尽力をされてきた横田事務所長の一面を知ることができる記事です。

土器屋理事の記事は「第4講 大気環境研究(富士山頂の大気化学)への長い曲がりくねった道」です。
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土器屋理事といえば大気化学研究者というイメージですが、元々は農芸化学(東京大学)の出身でした。そこから分析化学(東京大学、米国商務省標準局)、地球化学(気象研究所、気象大学校)と分野を越えた転職を経て、海洋や富士山等でのフィールドサイエンス(気象大学校、東京農工大学、江戸川大学)にたどり着いたという経緯が書いてあります。

全く違う分野を経験した土器屋理事ならではの苦労や発見がエピソードを交えて紹介されています。土壌肥料学(農学部)と地球化学(理学部)の違いをまとめた表があり、ここまで考え方のスケールや方向性が違うのか!と改めて驚く内容です。異なる学問分野(研究室文化)に身を移すというのは、外国どころか違う惑星で暮らし始めるくらいの感覚かもしれない…と想像してしまいました。

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 気象庁の観測船、旧凌風丸

記事の中に「研究費は、自由のない2000万円より自由な20万円」という言葉がありました。なんとなくですが、富士山に集まる研究者には「自由な20万」の方が好きなタイプが多いのではないでしょうか。自由なフィールドサイエンスを富士山で体現されてきた土器屋理事の、そこに至るまでの道のりを知ることができる記事です。

本NPOの二人による執筆記事の紹介でした。大気環境学会会員の方はぜひご一読ください。また、会員でないけれど読みたいという方は、広報委員宛てにご連絡ください。あるいは、著者本人にご連絡くださればきっと読ませてくれるはずです。  
(広報委員・村田浩太郎)

土器屋由紀子、大気環境学会誌 59 (2), A73-A78 (2024). DOI: 10.11298/taiki.59.A73
横田久司、大気環境学会誌 59 (2), A79-A85 (2024). DOI: 10.11298/taiki.59.A79

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 2024年2月27日以降、房総半島沖合でまとまった地震活動が開始しました。

 過去のこの地域の地震活動を調査してみると、2024年は、① 繰り返されるスロースリップ・イベントの中期的なインターバル(間隔)と②M6.5前後の地震発生の長期的なインターバル(間隔)とが重なる周期の年になる可能性があります。(下図①と②の2つの周期)

  ①は周期5~6年で繰り返されるスロースリップイベント。

  ②の現象は、再来周期37~38年程度の長いスケールで繰り返される地震活動。
 実は房総半島沖では過去にはタイムスケールの違う2種類①②の地震活動が発生していたのです。

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 国土地理院はスロースリップがどこで、どの程度の規模で発生しているかについて、3月1日に発表を行ないました。

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 スロースリップという現象は、1995年に発生した阪神淡路大震災をきっかけに全国に整備された高感度微小地震観測網(Hi-net)や GPS 連続観測システム(GEONET)の稼働により、数多く発見されるようになりました。そして、巨大地震発生の鍵であろうと今では考えられています。  房総沖では、北米プレート・フィリピン海プレート・太平洋プレートが複雑に重なり合っており、それぞれのプレートが独自に動き、境界がずれる事により地震が発生します。この時、境界がゆっくりずれると、いわば体に感じない地震が発生します。これがスロースリップなのです。

 房総沖では、この現象が数年間隔で発生している事がわかっています。これまでの観測で、房総沖のスロースリップ・イベントは平均 6年間隔で発生しており、最新のイベントは2018年6月に発生していました。

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 房総沖のスローイベントは、これまで、1996年5月、2002年10月、2007年 8月、2011 年10月、 2014 年 1月、2018年 6 月の6回が観測されていました。それぞれが 2 年から 6 年あまりの間隔で起き てており、今回の 2024 年2月の活動となりました。ちなみに前回のイベントから5年8ヶ月(68ヶ月)ぶりの発生とな りました。

 2011年10月のイベントと、2014年1月のイベント間隔だけ、特に27ヶ月と短いのは、東日本大震災の発生により、房総半島周辺の応力場(歪の分布)が変化したためであろうと推測されています。

もう一つの周期性(37年~38年という周期の地震活動の存在?!)(長期的な周期性② )

 房総半島沖合では、非常に特徴的な地震が一定の間隔で繰り返されてきました。

 それは、1912年、1950年、1987年に発生したマグニチュード6.5前後の地震で、特に1987年に発生した地震は「千葉県東方沖地震」と命名されており、 死者 2人、負傷者144人、住宅全壊16棟、半壊102棟、一部破損 6万3692 棟、山地崩壊 102箇所といった被害が発生しました。

 1950年や1987年の段階では、GPS 地殻変動観測はまだ行われておらず、スロースリップとの関係は不明ですが、理論的な推察として、当時からスロースリップが発生していたと考えるほうが、日本列島の地震活動を考える意味で自然かと思われます。

 仮説として、房総半島沖合では、スロースリップが6~8回発生すると、マグニチュード6.5前後の被害を生 じうる規模の地震が発生するのかもしれません。すでに1987年から37年が経過しており、これは看過できない状況と考えます。

(文責:長尾年恭)


(広報委員会)

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先日、第18回成果報告会がハイブリッド開催で成功裏に終了しましたが、報告会といえば「対面」だった昔の成果報告会について古いブログから少しご紹介します。

第1回は2008年1月27日(日曜日)でした。2007年の夏にNPOとして初めて行った観測の結果を報告しました。
これ以来、毎年1月に成果報告会をやっていましたが、会員に大学の研究者が増えるに従って1月は大学の忙しい時期で学生さんたちが出られないこと、会場に使っていた東大の小柴ホールや弥生講堂の会場費の値上などもあり、第8回からは3月に行われるようになりました。
第8回東京理科大学総合研究機構山岳大気研究部門との共催で、東京理科大の大教室とロビーホールで行われ、最高115名の参加になりました。

2015理科大

2015年3月22日、東京理科大・ロビーホールでポスターセッション。

2015_理科大教室

2015年3月22日、東京理科大階段教室で口頭発表。

2016_小柴ホール

第9回
(2016年3月13日)この年はおなじみの東大・小柴ホールで。

2017_理科大3月28日

第10回
(2017年3月5日)再び東京理科大・階段教室で行われ、以後、会場は東京理科大に定着しました。

2017_理科大教室

第11回
(2018年3月25日)東京理科大森戸記念館で。この年は初めて静岡TVのクルーが会場に入りました。

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第12回
(2019年3発17日)も東京理科大の森戸記念館で行われ、終了後のポスター会場を片付けて懇親会も行われました。この年に富士山環境研究センターが発足して新しいメンバーが増えたり、賑やかでした。
この時、次の年からCOVID-19によって対面開催ができなくなることなど誰が予想できたでしょう?

以後、昨年まではZoom中心のハイブリッド開催が続きました。
今年からは、会場を主体としたハイブリッド開催で、以前の形式に戻り始めていると言えるのでしょうか…
むしろ、Zoomの使用によりDavid Smith教授がアメリカ・カリフォルニアからの参加が可能となり、会場の植松光夫CESS総長の質問に答えることができたように、新しい手段を加えて成果報告会も進化して行くのではないでしょうか。
これからの発展が楽しみです。
(広報委員会)

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2024年3月10日、快晴の日曜日でした。

桜には少し早くこの季節にしては寒い1日でしたが、
新型コロナウイルスの「5類移行」に伴い、久しぶりに会場での「対面中心」+ハイブリッド開催となり、多くの皆様にご参加いただきました。
(Zoomでの入場者は一時60名を超えました)

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プログラムはこちらを御覧ください(pdf)

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12時45分より畠山史郎・大会運営委員長と三浦和彦理事長の挨拶から始まりました。

第一部(12:55~14:19)座長:加藤理事
「雷の研究と富士山測候所の活用」
Zoomで6件の講演。

会場では、
植松光夫・埼玉県環境科学国際センター(CESS)総長や
和田龍一理事、廣瀬勝己理事
などから質問があり活発な議論が行われました。

第二部(14:29~15:57)座長:南齋勉・静岡理工科大教授
「富士山頂における大気計測」
会場3件、Zoom2件の講演。

皆巳幸也理事の「2023年夏は猛暑だった?」という発表や
大河内副理事長の「マイクロプラスチック」の発表、
村田浩太郎CESS研究員の「微生物氷晶核」、
青山シビルエンジニアリング株式会社の小柳津由依さんの「イマフジ。プロジェクト」の発表など、
会場での講演には質問が集中して盛り上がりました。

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第二部(18:07~17:20)座長:大河内副理事長
「富士山太郎坊における大気計測」
会場4件、Zoom2件の講演。

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三浦理事長、矢吹正教京都大学准教授、南齋教授、和田理事による講演で、
時間ギリギリまで活発な討論がありました。
Zoom参加の岩坂泰信理事や、
木戸瑞佳・富山県環境科学センター研究員他の活発な質問もありました。

皆巳副事務局長の閉会の挨拶で第17回成果報告会は終了しました。

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久しぶりのにぎやかな成果報告会でした。

事務局のみなさんの周到な準備もあり、
ハイブリッド環境が格段に改良され、
リモート講演者と会場講演者が入れ替わる際にも
スムーズな運営となりました。

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 Zoom参加者(終了時撮影)

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 恒例の二次会!みんな笑顔でバッチリ!(撮影:村田浩太郎広報委員)

成果報告会終了後には、
久しぶりの「対面」による二次会も行われ
三浦理事長の周到なアレンジで盛り上がりました。

無事終了いたしました。
みなさま、お疲れさまでした🍺

(広報委員会)


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