太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2025年01月

今年はNPO法人富士山測候所を活用する会が発足して20年目、届け出が受理されてから19年目になります。2005年にはこれほど長く続くことになるとは、関係者の誰も想像すらできませんでした。
この20年間は幾多のチャレンジの連続でしたが、その度になんとか乗り越えてきました。
また、困難なことだけではなく、楽しいことも多々ありました。

本ブログでは「本NPOの20年を振り返る」と題して、この20年間の活動のあしあとを振り返ってみたいと思います。月1回程度のゆっくりしたペースになりますが、よろしくお願いいたします。

2005年の古い手帳が残っています。まず、その中から少しご紹介しましょう。
1月24-26日に、京都大学で行われたAIEシンポジウム(笠原三紀夫京都大学教授を中心とした特定領域研究(A)「東アジアにおけるエアロゾル大気環境インパクト(AIE)」(2000-2004)の報告集会の一つ)が行われ、この科研費のサブグループ「東アジアにおける大気エアロゾルの空間分布」の中のさらに小さいグループに属していた当時江戸川大学教授の土器屋由紀子理事らが富士山の大気について報告を行っています。

AIEslide

 AIEセミナーにおける研究発表スライドの一部(2005年1月24日)

上の図は発表に使ったスライドの一部です。ピントが甘いのですが、片山葉子理事、兼保直樹理事、五十嵐康人・京大教授などの昔の姿もあります。当時は、これが最後の山頂の測候所での観測になるのかという暗い予感もあり、スライドのキャプションにもなっています。

しかし、このAIE科研費グループで講演させていただき、同時に富士山測候所利用の継続をアピールしたところ、有難いことに笠原先生はじめ大気環境学会関係の多くの方々、特に亡くなられた兵庫県環境衛生研究所の玉置元則様たちが署名運動にも取り組んで下さって、300人以上の研究者の署名を集めて下さいました。

この時点ではまだ、本NPOは結成されておらず、「富士山高所科学研究会」(代表世話人:浅野勝己・土器屋由紀子)として活動していました。

笠原先生はこの後、2005年11月の本NPO結成時には理事の一人として参加して下さいました。
また、後年、この特定研究の一般向けの出版『大気と微粒子の話ーエアロゾルと地球環境』(笠原三紀夫・東野達監修、京大出版、2008)の45名の著者のなかに、畠山史郎理事、五十嵐会員、奥田知明会員、土器屋理事、三浦理事長、皆巳理事の6名が入っているのもこの当時からのご縁を感じます。
改めて、設立当初お世話になった方々を思い出しています。

(広報委員会)

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本NPOからも多数の関係者が参加する日本大気電気学会。
2025年の第103回 研究発表会は、静岡県立大学(会場:静岡県職員会館もくせい会館第1会議室)で開催されました。
第103回 研究発表会概要:https://www.saej.jp/conference/program103.html
本NPO関連発表
◯ 小柳津由依,柴崎俊明(青山シビルエンジニヤリング株式会社)富士山周辺の雷解析 
◯ 森樹大,奥田知明(慶應大),松木篤(金沢大),岩田歩(気象研),鴨川仁(静岡県立大)能登における粒子の帯電状態と大気電場との関係 
◯ 藤原博伸(NPO法人富士山環境研究センター),大河内博(早大),鴨川仁(静岡県立大),林 修吾(気象研) 首都圏で対地雷により生成される NO2 の量の推定 

富士山に関する発表としては、青山シビルエンジニヤリングの小柳津由依さんによる「富士山周辺の雷解析(富士山における気象観測と大気電場観測による雷雲発生予測)」の発表がありました。


 青山シビルエンジニヤリング「イマフジ。」の成果発表

また、富士山環境研究センター 藤原博伸研究員の発表は、今年のWNI気象文化創造センターの研究助成に関係する発表ということで研究発表がなされました。(当日の発表は代理発表)。

同学会のエアロゾル研究分野は、本NPOの三浦和彦理事長を中心としたグループがかつては一大研究グループとなっておりましたが、今回の発表会では、慶應大学森先生、電力中央研究所の三木先生など
いずれも山頂利用実績のある先生方の参画で、今後も面白くなっていきそうな展開になっていました。


 2日間の開催で70名ほどの参加者


学生はポスター発表で成果発表


 懇親会は、「シズマエ」(静岡でとれる海産物)を楽しみました

(広報委員会)
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大分で活動される「NPO法人大分に科学を広める会」から本NPO富士山測候所を活用する会に講演の依頼があり、1月18日に大分県立図書館にて「富士山から見えるサイエンス」というタイトルで鴨川仁副理事長が講演を行いました。
「NPO法人大分に科学を広める会」は、県内に科学館がないのは大分県と沖縄県の2県のみであるという危機感から大分高専名誉教授の工藤康紀先生らが発足したNPO法人であり、同じ科学系のNPO法人からの講演依頼ということで、鴨川仁副理事長が講演者として大分に出向きました。

これに合わせて、2025年1月10日から18日まで大分県立図書館一般資料室において特集展示『富士山から見えるサイエンス』が開催されました。
特集展示には、富士山の自然や、噴火に関する本などが集められ、また、富士山の環境を活かした科学研究についての本も展示されました。

 本NPO関連の書籍も展示されていました 
会場には小学生を多数含む50名ほどの参加者が、富士山の科学について聴講しました。
もちろん大分から富士山は見えませんが、多くの方に富士山の科学的一面を知って頂けたのは良い機会でした。


 「富士山から見えるサイエンス」講演会のポスター
 まなびの広場おおいたウェブサイトより

同NPOが毎年行われている科学講演会の一環で本NPO富士山測候所活用する会に昨年10月に講演依頼がありました。


 東京から大分までのフライト

富士山の撮影を狙うも航路が期待していた航路ではなく、うまく撮影できる座席でなかったため残念ながら富士山は撮影できませんでした。


 会場の大分県立図書館


 2025年1月14日大分合同新聞に掲載された講演会の案内


 講演会の模様

60分の講演後には20分にも及ぶ多数の質問が会場からありました。

IMG_6699
 このブログの読者ならばよくご存知のクラウドファンディングのサポーターリスト
(写真は、山頂1号庁舎2階に掲示されているもの)


なんと同NPOの代表理事工藤先生もご支援いただいたとのことでした。
ありがとうございました。

(広報委員会)
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2014年の山岳大気化学物理シンポジウムの主催地だった、コロラド州、Steamboat SpringsのStorm Peak Laboratory(SPL)のGannet Haller所長(2019年の本NPOの富士山環境研究センター発足時には英文名称でお世話になりました)から、
「今年も、降雪のプロジェクトでSPLは大忙しです」という新年のメールを頂きました。

メールに添付されていたウィスコンシン大学マディソン校大気海洋科学科のプレスリリース記事(https://www.aos.wisc.edu/news/S2noCliME%20Press%20Release/)を元に、プロジェクトの概要を意訳してご紹介します。

〜〜〜
記事のタイトルは「New Field Campaign to Study Snow Processes at Remote Mountain Laboratory in Colorado:コロラド州の遠隔山岳サイトにおける雪生成プロセスに関する野外集中観測」です。

全米科学財団(NSF)が資金を提供する「Snow Sensitivity to Clouds in a Mountain Environment (S2noCliME):山岳環境における雲に対する雪の感受性」という新しいフィールド・キャンペーンで、ウィスコンシン大学マディソン校大気海洋科学科(Atmospheric Oceanic Sciences: AOS)のAngela Rowe(アンジェラ・ロウ)教授が、この研究の主任研究者の一人です。
アンナ・ルー教授
 AOS の アンジェラ・ロウ教授、2020年コロラドにて(プレスリリース記事より)

米国西部山岳地帯は温暖化が進み、積雪量全体の減少、低標高の積雪面積の減少、雪面への降雨の増加が見られていますが、この地域の降水量の予測はまだ確立されていないため、山岳地域における雲と降水プロセスの理解と予測を改善することが必要です。
内陸山脈の降雪プロセスの変動を観測することで、気象レーダーから降雪の特性を推測する能力を向上させます。これは周辺地域の水資源の管理に重要な知見となります。

2024-25年の冬のシーズン中、研究者たちはコロラド州SPL研究所に、地上観測、リモートセンシング、現地(雲中)観測を組み合わせた観測装置を配備します。ワーナー山の頂上に位置するこの研究所は、データ収集のためのユニークなサイトです。

歴史的に、この種の研究のほとんどは、雲をサンプリングするために雲プローブ計測器を装備した航空機を使用してきましたが、莫大な費用がかかります。SPL研究所では、雲に覆われがちな場所に計測器を設置することで、長時間の観測を可能にし、雲の中で起きていることと、地上に降ったり積もったりする雪の特性について統計的な研究が可能です。

このプロジェクトには山岳研究が初めての多くの若い研究者たちが加わります。AOSのAnkur Desai氏は「SPLにおけるAOSの新しい歴史の一章になるでしょう。Rowe教授の才能と参加学生たちのチームの将来性に期待している」と、今プロジェクトの成功を楽しみにしています。

なお、このプロジェクトの準備は2024年の夏から始まり、2024年12月1日に正式にスタートしています。
〜〜〜

ACPM2014(当時はACP)に参加したときには、理想的な山岳研究施設と思われたSPLもその後の政権交代などの影響を受けて、所長のGannet Haller博士も苦労されたようですが、新しいプロジェクトで張り切っておられる様子を頼もしく思います。
今後も注目してゆきたいですね。
(広報委員会)

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阪神・淡路大震災から30年目に当たり、専門家である長尾年恭理事のブログを掲載いたします。

1995年1月17日早朝、関西地方で大地震が発生しました。これが阪神・淡路大震災です。今年はこの震災発生から丁度30年という節目の年にあたります。この地震では、約6,500人の命が奪われました。この地震の丁度1年前(1994年1月17日)、カリフォルニア州でノースリッジ地震が発生していました。ノースリッジ地震では、高速道路が大規模に崩壊し大きな話題となりました。当時の日本の建築学・土木工学の専門家は「日本では地震で高速道路が崩壊するような事は無い」と発言していたのですが、阪神・淡路大震災では、阪神高速道路が600m以上に渡って横倒しとなり、その自信が打ち砕かれる事になったのです。
この大震災では、死者の80%はほぼ即死であり、実は建物倒壊が原因となっていたのです。このため、関東大震災では、火災のみが注目されていたのですが、この大震災では、耐震補強という事が大きくクローズアップされる事となりました。次の図は阪神・淡路大震災で何時にどれくらいの方が亡くなったかの検死記録です。

ブログ図1

図1
 阪神・淡路大震災(における死者の死亡推定時刻(神戸市分) 
 (当時神戸市監察医の横浜市大西村明儒氏らによる)

筆者は地震予知研究をこれまで長年行ってきました。もし地震予知が実現すれば、それは人的被害低減に大きく貢献する事を意味します。また「予知か防災か」という議論がなされる事がありますがこのステレオタイプの議論は間違いです。たとえ予知に成功しても地震は発生しますので、防災と比較すべき事では無いのです。あえて言えば「予知も防災も」が正しく、予知は地震防災において人的被害を減らすという意味で最後の砦なのだと考えています。

またこの地震で明らかになったのは、関西地方の人は「関西には大地震は来ない」と考えていた人が多かったという事で、いかに地学的な知識・地域の伝承が重要かという事を思い知らされた地震でもありました。
さらにこの地震では、関東大震災のように火災で亡くなったというより、さきほども述べましたが建物の倒壊により命を落とした方が極めて多かった事が特徴でした。窒息死、圧死、ショック・損傷、打撲・挫滅症、臓器不全・凍死・衰弱死、焼死・全身火傷等の死因に分類されているのですが、実に死者の83%の方が建物倒壊等により亡くなっていたのです。これが阪神・淡路大震災の最も大きな特徴でした。それと、火災の発生と建物の倒壊との間に極めて興味深い関係が明らかとなったのもこの震災でした。次の図は、この地震における建物全壊率と直後出火率の関係です。

ブログ図2

図2 消防庁ウェブサイトより

この図から、極めて興味深い事実が見てとれます。つまり、火災は建物が倒壊した事により引き起こされていたのです。建物が全壊しなかった北区と垂水区ではなんと直後出火件数はゼロだったのです。建物を壊さない事が火事を減らす最大の要因だったのです。

さらにこの震災では死者の年齢分布について、極めて深刻な結果が得られたのです。次の図は阪神・淡路大震災における年齢別死亡者数です。さきほどこの震災では、80%以上の方がほぼ即死であった事を説明しました。そのため、この年齢別の死亡者数のグラフはおおよそ即死した方の年齢分布とも言えるのです。中年からご高齢の方が確かに多いですが、これは中小企業や古い商店街であった長田区で多くの方が亡くなったためと解釈されています。

ブログ図3カラー

図3
  阪神・淡路大震災における年齢別死亡者数
 (厚生統計協会『国民衛生の動向』1996年版より)

それ以外に特徴的なのは、20歳から24歳の所に顕著なピークが存在する事です。実はこれは大学生なのです。一般的に日本では高校生まではご両親と一緒に暮らしている方がほとんどです。そして大学を卒業しますと、初任給も入りますから、学生時代よりは少しは良いアパート等に住む事になります。
つまり日本で、一番安い=古い家に住んでいるのは、大学生なのです。このグラフは家が地震と同時に圧潰(pancake collapseと英語では表現します)してしまうと、体力は関係無いという事を意味しているのです。極端に言えば、地震が人を殺すのではなく、家が人を殺すのです。
このような事実から阪神・淡路大震災では、耐震補強の重要性が改めて認識される事になったのです。(文責:長尾年恭)

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