太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2025年03月

3月28日、現地時間13時50分(日本時間15時20分)頃、ミャンマーで極めて大きな地震が発生しました。米国地質調査所(USGS)は、マグニチュード(M)7.7と報告しています。

この地震はミャンマーの中央を南北に走る長さ約1000キロの巨大断層「ザガイン断層」の一部の200キロ程度がずれたことによって発生しました。昨年1月の能登半島地震では断層は150kmほどずれ動きましたが、それ以上の規模の地震だったのです。



ほとんどの方は、「ミャンマーって地震あまりおきないんじゃない?」とお思いだったかもしれませんが、実はユーラシアプレートとインドプレートの境界が近くに存在し、かなり地震活動の高い地域と言えるのです。



次の図は、ミャンマーおよびその周辺における地震活動です。1950年以降のマグニチュード6以上の地震をすべて図示してあります。図中の★が今回の地震です。



また今後被害が拡大するであろう根拠となるのが次の図です。米国地質調査所(USGS)は地震活動に人口密度のデータを重ねて表現できるようになっており、今回地震が発生した周辺の地域はかなり人口密度の高い地域であった事がわかります。次に示す図は地形に人口密度を重ねたもの(左側)となります。



左端で特に黒い点が多くなっていますが、ここはバングラデシュになります。ミャンマーの被害が少ない事を祈るばかりです。

(文責:長尾年恭)
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3月9日の本NPO成果報告会に参加されたNPO法人CSW(クライメイト・ウォッチ・スクエア)の林陽生先生のお誘いで、3月16日のオンライ勉強会に参加しました。

講演はの泉耕二CWS副理事長で、参加者16数名のこじんまりした日曜日の夜の勉強会で、本NPOからも、山梨県富士山科学研究所の亀谷伸子研究員、青山シビルエンジニヤリング(株)気象コンサルティング部・小柳津由依さん、ネパール工科大学・桐原悦雄客員教授と、本NPOの土器屋由紀子理事の4名が参加しました。

泉先生の講演はタイトルが示すように多岐にわたります。先ず、「航空機事故」については1966年のBOAC機事故に関する気象学的解析でした。

この事故は1966(昭和41)年3月5日、BOAC機が、乗客サービスのため手動で富士山頂付近を運転中に乱気流に巻き込まれ、空中分解して遭難、太郎坊付近にバラバラに墜落炎上し、124名の乗客乗員が犠牲になったものです。


 泉耕二先生の講演スライドより


精緻な解析の内容は是非、泉先生の論文(参考文献1)をご覧下さい。

なお、講演で使われたスライドに、以前こちらのブログでもご紹介した山本三郎氏の著書が重要な資料として紹介されていました。この本は、気象庁の富士山測候所時代の職員のバイブルであっただけでなく、今でも読まれていることに感動しました。


 泉耕二先生の講演スライドより

「登山ルートと遭難」では、登山ルートに「夏道」と「冬道」があり、それぞれの地質学的特徴、気象学的特徴などが示されて、また、水槽実験、風洞実験などの情報もありました。
植物の形状から、風の影響を推定したりする手法も非常に興味深いものでした。

小柳津さんからの質問「イマフジ。では現在、富士山周辺11地点で気象観測を行っていますが、今後新たに新たに山頂および各登山道に気象観測装置を設置する場合、夏期登山者にとって有益となる設置場所についてご意見をいただけるでしょうか」
にたいして、泉先生と林先生から
「別途、検討する機会を設けましょう」との回答がありました。

「大沢崩れ」については時間切れになってしまいましたが、今後の楽しみにしたいと思います。

以上、ごく簡単に勉強会をご紹介しましたが、
このような小人数で、自由に質問を交換できる集まりがあることを知り、
本NPOでも、今後、参考にさせて頂ければと思いました。

参考文献
1.Kouji Izumi and Yousei Hayashi, The air flow around an islated mountain, International symposium on scale modeling, the Japan Society of mechanical engineering, July 18-22,1988
2.泉耕二、山岳の滑落、「風の辞典」(丸善)


(広報委員会)

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ANNnewsCHより

3月21日の各ニュース番組で内閣府・有識者検討会報告書として富士山が噴火した時にどう対応すればいいのか発表されました。


ANNnewsCHより

ここ100年間は噴火があっても小さなものしかなかったので、いつ大きい噴火があってもおかしくないこと。噴火した場合の被害として、火山灰によるものが大きいことに注意を喚起しました。
1703年の宝永噴火のような大規模噴火の場合、火山灰の被害は関東一円におよびます。


ANNnewsCHより

交通機関については、レールに0.5mm積もるだけで、鉄道は運行停止になり、3cm以上積もると二輪駆動の自動車は通行不可能になります。
それ以上の場合の被害はさらに甚大で、火山灰の堆積が30cm以上で緊急避難が必要になります。


ANNnewsCHより

しかし、首都圏でいっせいに地域外への避難は現実的はないこと、
「原則避難」として、30cm以下の地域も自宅などで生活継続が望まれます。
そのため、可能なら2週間部程度の備蓄をすすめます。


ANNnewsCHより

気象庁は3cm以上降り積もる予測の場合、警報として情報を発表するべきかどうかを春頃までに取りまとめる予定とのことです。

詳しいニュースの内容はこちらをご覧ください。

ANNnewsCH



TBS NEWS DIG



今後も富士山の噴火の対策に関する藤井理事の発言にご注目下さい。
(広報委員会)

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タモリ、“命に関わる”南海トラフ地震について注意喚起。
日本最大級の津波避難タワーにも登る

という惹句で示されたこの番組はタモリさん自身が高知へ出かけ、
25m津波タワーに登って取材し他意欲的なものです。



本NPOの長尾年恭理事は企画段階から協力して、内容にアドバイスを行っています。

テレ朝ポストから番組の内容を抜粋してご紹介します。

今後30年以内にマグニチュード8〜9クラスの地震が発生する確率が約80パーセントといわれている“南海トラフ地震”。
その被害は超広域に及ぶと推測され、最悪の場合、東日本大震災の約17倍、およそ32万人の死者が出ると想定されている。そんな巨大地震に我々はどう向き合うべきなのか。
今回の『タモリステーション』では、南海トラフ地震を“正しく知り”、“正しく恐れ”、“正しく備える”ため、その脅威と対策を専門家とともに2時間じっくり考えていく。
テレ朝ポスト(https://post.tv-asahi.co.jp/post-429200/)より



◆南海トラフ地震は“超広域災害”
九州、四国、関西圏や東海圏だけではなく、首都圏にも被害が及ぶと予測されている“超広域災害”南海トラフ地震。
テレ朝ポスト(https://post.tv-asahi.co.jp/post-429200/)より



◆昭和の“南海トラフ地震”にも注目
番組では、南海トラフ地震の歴史もひも解く。
実は、南海トラフ地震は過去、繰り返し発生しており、記録に残されている最古の684年(飛鳥時代)の“白鳳地震”以降、およそ100年~200年の間隔で起きていることがわかっている。
テレ朝ポスト(https://post.tv-asahi.co.jp/post-429200/)より

詳しい内容はテレ朝ポストを御覧ください。

(広報委員会)

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~研究の最前線、今年も富士山から~
2025年3月9日、第18回成果報告会が開催されました。
今年も多くの研究者や関係者が集まり、富士山測候所や山麓・太郎坊を活用した最新の研究成果が報告されました。気象、大気汚染、地質、高所医学、微生物など、さまざまな分野での貴重な発表がありました。

開催概要
● 日程:2025年3月9日(日)
● 場所:連合会館 + オンライン(ハイブリッド開催)
● 主催:認定NPO法人富士山測候所を活用する会
● 後援:静岡県
      山梨県
      一般財団法人WNI気象文化創造センター
      一般財団法人新技術振興渡辺記念会
      Yahoo!基金
      公益財団法人ふじのくに未来財団
● 参加者:研究者、環境団体、学生、一般の方々など63名

セッションハイライト
報告会では、富士山測候所や山麓・太郎坊のユニークな環境を活かした研究が発表されました。
セッションごとに簡単にご紹介します。

1. 富士山の空と大地の神秘
気象、雷、大気電気に関する富士山頂の空にまつわる現象に関する研究をはじめ、山頂付近の火山噴出物から噴火の詳細な歴史を調べる調査、宇宙線を用いて富士山の中を覗く、というような富士山の大地にまつわる報告が行われました。まさに富士山というユニークな環境をダイレクトに活かし、宇宙や空から大地、過去から現在を股にかけるスケールの大きなセッションとなりました。




2. 極限の環境と生命
 高所である富士山は人である登山者も含めてあらゆる生物にとってある種の極限環境です。その特性を活かし、富士山の極限環境と(広い意味での)生物に関わるセッションとなりました。富士山の過酷で変化に富む気象を把握するための調査や、高所環境での睡眠や血行に関する研究、さらに山頂での強烈な紫外線に耐える微生物やウイルスを探しだす試みや、大気中に浮遊する微生物の調査・研究の話がありました。




3. 見えない空気の世界 〜富士山で探るガスとエアロゾル〜
富士山測候所は標高3,776mという国内唯一の高所観測拠点。その立地を生かし、地球温暖化の原因である温室効果ガスや越境大気汚染の兆候を捉える研究が続けられています。今年は、長期的な二酸化炭素の傾向や、二酸化硫黄や一酸化炭素、オゾンなどのガス成分の動向に加え、雲の発生や成長メカニズムに関する知見が報告されました。さらに、近年注目を集めている大気中マイクロプラスチックが地球規模で広がっていることを示す新たな知見や、大気中浮遊粒子の磁性を解析する新たな取り組みの話もありました。






会場の様子
現地会場は「コロナ禍」以前と比べて久々に盛況な様子で、ときに笑いも起こりつつ穏やかな雰囲気の中で活発な質問や議論がありました。オンライン参加者からもビデオ会話やチャットで質問やコメントが寄せられました。



おわりに
今年の成果報告会では、平年以上に多岐にわたる分野の研究が紹介され、富士山測候所ならびに山麓・太郎坊が自然科学研究や医学研究に果たす役割の特異性や重要性が改めて確認されたと言えます。
来年の報告会では、さらに興味深い研究成果が発表されることでしょう。
日本最高峰から生まれる研究、これからも引き続きご注目下さい!


 現地参加者の集合写真(撮影タイミングが遅れてしまい、全員で撮り損ねてしまいました...)


 終了後の懇親会にて一枚(全員もれなく写す店員さんの技術が素晴らしいです)

講演予稿集のプログラムに記載されている、講演者・共同研究者の並び順は所属ごとに記載しています。予稿本文の方の講演者・共同研究者の記載をご参照いただきますようお願い申し上げます。

(実行委員長 兼 広報委員会)

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