太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

カテゴリ: 学会

2024年9月11日〜13日に開催された第65回大気環境学会年会(慶應義塾大学日吉キャンパス、横浜市)にて、本NPOの加藤俊吾理事(東京都立大学)が指導する野田琴音さん、青木紳悟さんが学生・若手研究者優秀発表賞(ポスター部門)を受賞しました!

野田琴音さん(東京都立大学)
「富士山麓の太郎坊におけるCO、O3、SO2の長期観測」


 左から、奥田知明年会長(慶應義塾大学)と野田さん(撮影:村田浩太郎)

青木紳悟さん(東京都立大学)
「電気化学センサーを用いた富士山近傍での火山ガスモニタリング」


 左から、奥田年会長と青木さん(撮影:村田浩太郎)

西日があたって過酷な暑さのポスター会場でしたが、それに負けない熱さの発表でした。


 発表の合間の一枚。左から、村田浩太郎理事、渡辺幸一会員(富山県立大学)、野田さん、米持真一会員(埼玉県環境科学国際センター)(撮影:土器屋由紀子)

懇親会中に執り行われた授賞式では、「富士山測候所を活用する会」チームで集まって受賞者を囲みました。


 左から、和田龍一理事、皆巳幸也事務局長、南齋勉理事、土器屋由紀子理事、野田さん、青木さん、加藤俊吾理事、横田久司東京事務所長(撮影:村田浩太郎)


 東京都立大学チームの3人で一枚。嬉しそうな加藤理事(撮影:村田浩太郎)

もちろん、他にも富士山関係の素晴らしい研究発表が行われました。
小山有宇理さん(東京都立大学)
「夏季富士山頂における大気汚染物質の長期観測と経年変化」


 写真右端が暑い中頑張って研究の説明をする小山さん(撮影:土器屋由紀子)

 岡本大地さん(静岡理工科大学)
 「富士山麓におけるドローン採取による単一雲滴分析に基づく雲成長過程の検討」

  皆巳事務局長(手前)に説明している岡本さん(奥)(撮影:村田浩太郎)

南齋勉理事(静岡理工科大学)
  • シンポジウム「自身の強みで切り開く大気環境研究の道 〜心事の棚卸し〜」
  • 市民集会「大気観測におけるドローンの最新技術の利活用 講演とデモ飛行」での「ドローン飛行に関するルールとドローンを用いた雲粒サンプリング研究の紹介」
どちらのイベントも100名は軽く超えるほどの参加者の中、太郎坊でのドローン観測や富士山頂での雲粒採取の取り組みと共に、本NPOの紹介がしっかりと入れ込まれていました。


 シンポジウムでの講演スライドから本NPOの紹介部分(提供:南齋勉)

成果はいつも賞のように華やかなものとは限りませんが、皆それぞれ懸命に研究を進めているところです。
これからも富士山での研究に取り組む学生たち・研究者たちの頑張りに応援をよろしくお願いします!


(広報委員会・村田浩太郎)
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2024年8月20~22日に工学院大学八王子キャンパスで開催された第41回エアロゾル科学・技術研究討論会にて、三浦和彦理事長と村田浩太郎理事による研究発表が行われました。

三浦理事長の発表は「富士山麓太郎坊で測定したエアロゾルの濃度変化(2)」というタイトルで、2017年~2023年の太郎坊での観測で得られたエアロゾル粒子(液滴あるいは固体微粒子)の粒径分布や気体成分がエアロゾル粒子に変化する「新粒子生成」現象について、大気化学グループによって観測されている様々なデータを統合して考察されたものです。


三浦理事長の発表スライドの表紙。当NPO理事をはじめ、会員も共同研究者として名を連ねています。


村田理事の発表は「2023年夏季の富士山頂大気中における氷晶核数濃度および細菌群集組成」で、2023年の山頂夏期観測で得られた、山頂大気中の氷晶核と細菌群集の変動とその要因と生物氷晶核の出現と共に検出された細菌について解析したものです。


村田理事が発表したポスター。ポスターセッション中は写真を撮る余裕がないほど質問をいただきました。
(撮影:村田浩太郎)


学会には畠山史郎理事や兼保直樹理事(次期日本エアロゾル学会長)、小林拓理事の参加もありました。


畠山理事(手前)と兼保理事(畠山理事の3列後の中央)(撮影:三浦和彦)

また、会期の前日である19日には、学会プレイベントとして日本エアロゾル学会若手会による第19回若手討論会「個別粒子分析を語ろう」が開催され、本ブログでも過去に紹介された、上田紗也子会員による招待講演「大気エアロゾル粒子の観察から個性の価値を考える」も行われました。上田会員がこれまで行ってきた個別粒子分析に関する研究の歩みや、電子顕微鏡での粒子の観察、船の上での観測の様子など貴重な写真が豊富で、経験談を踏まえた楽しいお話でした。馬の背手前で富士山測候所をバックに撮った写真もありました。

きれいな顕微鏡写真を見せて解説をする上田会員(撮影:村田浩太郎)

晩夏からは多くの学会が開催されるシーズンです。大気化学や雷関係では、
9月11日〜13日は第65回大気環境学会年会(慶應義塾大学日吉キャンパス)、
1月10、11日は日本大気電気学会第103回研究発表会(静岡県立大学グローバル地域センター)が開催されます。

今年も夏に取ったデータを解析しつつ、これまでの結果を学会で議論する、実りある秋を迎えつつあります。
(広報委員会・村田浩太郎)
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5月24日(金)に静岡県総合研修所もくせい会館にて、第3回日本エアロゾル学会若手会基礎講習会が開催されました。

主催の日本エアロゾル学会若手会は、以前のブログでも書いた通り、現幹事メンバーは富士山観測に何らかのかたちで関係している人ばかりです。

エアロゾルと大気電気の初心者向けにその道の専門家3名が講義を行うという企画であり、本NPOから三浦和彦理事長と鴨川仁専務理事がレクチャーを行いました。

Zoomによる同時配信ありで行い、会場には14名(幹事と講師含む)、オンラインでは最大64名の合計78名参加となり、専門的な講習会としては盛況な会になりました。本NPO関係者からは土器屋由紀子理事、加藤俊吾理事もオンライン参加しました。


 会場の様子


 三浦理事長の講義

三浦理事長の講義は「エアロゾルの基礎」で、エアロゾルの基礎中の基礎である粒径分布(といってもこれが初心者には難しい)から始まり、シャボン玉の雲の実験など楽しい動画もありつつ、もちろん富士山での研究の話へとつながっていきました。静岡理工科大学の南齋勉教授をはじめとする現地参加者から質問があがり、徐々に会場が温まっていくのを感じました。


 質問する南齋勉教授


 鴨川専務理事の講義

鴨川専務理事の講義は「大気電気の基礎」で、電気のプラス/マイナスの基本的なところから、富士山頂から調べる雷や高高度放電発光現象の話、そして全地球規模での電気回路という壮大な話へとつながっていきました。すでに温まりきった会場とオンラインから活発な質問が出ました。

最後は高知工業高等専門学校の長門研吉教授から「エアロゾルと大気電気の境界トピックスの紹介」という講義で、大気中イオンがどのようにでき、変化していくのかという話から、大気イオンがエアロゾルを作る話、除電器のエアロゾルへの影響など、刺激的な境界領域の紹介・解説をしていただきました。

会場の賃借時間を少しオーバーするほど盛り上がり、慌てながら集合写真を撮って終了しました。

今回会場だった静岡県総合研修所もくせい会館は非常に快適な設備で、来年の1月10日(金)、11日(土)の日本大気電気学会もここで行われる予定とのことです。

今回の講習会でのレクチャーを通じて、富士山頂での面白い研究についても若い研究者・技術者や学生さんたちに広く認知されたのでは思い、そのうちにここから新たな仲間が増えると良いな、と期待しているところです。


 現地参加者で集合写真


 講習会後は「しずまえ」食材を楽しめる食彩岩生にて懇親会

(広報委員会、村田浩太郎)
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2023年の講習会集合写真

広報委員の村田(埼玉県環境科学国際センター)です。
現在、日本エアロゾル学会の若手会の代表をしておりまして、
5月24日(金)の午後に初学者向けのエアロゾルと大気電気の講習会を開催します。
詳細と参加登録は→こちらから

どなたでも無料で参加でき、NPO関係者も多く参画しているのでこの場で参加募集します。

今回はNPOから2名が講師として参加し、
三浦和彦理事長が「エアロゾルの基礎」、
鴨川仁専務理事が「大気電気の基礎」
の講義を行います。
富士山の話も出てくるかもしれません…!

加えて、高知工業高等専門学校・長門研吉教授から「エアロゾルと大気電気の横断トピックス紹介」の講義もあり、
エアロゾルと大気電気についてその道の第一人者から学べる大変贅沢な講習会になっています。

この講習会を聴くことで、富士山での研究成果もよく理解できるようになり、今年の成果報告会がさらに楽しめるようになると思います。

ちなみに、現在のエアロゾル学会若手会幹事はたまたま富士山に縁のある人ばかりです。
副代表の森樹大さん(慶應義塾大学)
→以前の東京理科大学在籍時から三浦理事長と一緒に富士山観測で活躍
会計の北村直己さん(グリーンブルー株式会社)
太郎坊でのドローン観測測候所内の空気監視センサーなど色々観測にご協力をいただいているグリーンブルーさん
庶務の成畑晃希さん(パナソニック株式会社)
→学生時代(2016、2017年)に東秀憲先生(当時・金沢大学、現・産業医科大学)と富士山頂観測に参加

奇しくも富士山関係者の多いこの講習会、ぜひぜひご参加ください。
参加登録締切は5月17日(金)です。

【名 称】
第3回 日本エアロゾル学会若手会基礎講習会

【日 時】
2024年5月24日(金)13:00~17:00(受付12:30開始)

【会 場】
静岡県総合研修所 もくせい会館 静岡県職員会館
〒420-0839 静岡県葵区鷹匠3–6–1
※Zoomでの配信もしますので、オンライン参加も可能です!

【詳 細】
詳細と参加登録は→こちらから

トップの写真は昨年の基礎講習会の集合写真です。前回は畠山史郎理事が講師の一人でした。
また、ここに写っている方以外にもオンラインで多数ご参加いただきました。
(広報委員会・村田浩太郎)

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最新の大気環境学会誌第59巻第2号に、入門講座「大気環境 むかし・いま」というシリーズの一部として、横田久司事務所長と土器屋由紀子理事の執筆記事が掲載されました。

入門講座「大気環境 むかし・いま」は、大気環境研究の歴史を振り返るために、大気環境に関する研究を牽引してこられた学会の名誉会員の先生方に、研究のきっかけ(経緯、歴史)、昔の観測手法や測器、観測・実験・共同研究のコツ、面白かったこと、苦労したこと、失敗談などを紹介してもらうシリーズだそうです。

記事の発行日は2024年3月10日で、偶然にも第17回成果報告会と同じ日でした。

 横田事務所長の記事は「第5講 使用過程にある大型ディーゼル自動車の排出低減対策について」です。
画像1
 大気環境学会誌第59巻第2号より
横田事務所長は東京都環境科学研究所で長年大型ディーゼル車の排ガス研究に取り組んでおられました。車載計測システムによる排ガス測定方法の開発や、社会を変えた「アイドリングストップ」の研究、ディーゼル車からの粒子排出を減らすDPFの研究など、その経緯や成果、さまざまな人たちの出会いや、当時大きな転換期を迎えていた大気環境学会での事務局長としての仕事などが紹介されています。
fig1
 東京都環境科学研究所の大型自動車実験システム(地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターウェブサイトより)
その中にこんな記述があります。

「石原慎太郎氏が都知事に就任した直後の7月、東京都環境科学研究所に視察に訪れた際、試験に用いたDPF装置とともに、ペットボトル入りの黒煙について説明した。当時の大型ディーゼル車から1kmの走行当たり約1gの黒煙が排出されていることを話すと、非常に驚かれた様子であった。このペットボトルは、知事が随所で見せていたのを覚えている方も多いだろう」。
ishihara
 2022/2/3 毎日新聞ウェブサイトより
この「黒煙入りペットボトル」を使った石原元都知事の記者会見は、首都圏でのディーゼル車排ガス規制のきっかけとして、日本の大気環境史で後世に伝えられるであろう1シーンです。日本の大気環境学の黎明期(1970年)から今日に至るまで、首都圏の大気環境の改善に尽力をされてきた横田事務所長の一面を知ることができる記事です。

土器屋理事の記事は「第4講 大気環境研究(富士山頂の大気化学)への長い曲がりくねった道」です。
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土器屋理事といえば大気化学研究者というイメージですが、元々は農芸化学(東京大学)の出身でした。そこから分析化学(東京大学、米国商務省標準局)、地球化学(気象研究所、気象大学校)と分野を越えた転職を経て、海洋や富士山等でのフィールドサイエンス(気象大学校、東京農工大学、江戸川大学)にたどり着いたという経緯が書いてあります。

全く違う分野を経験した土器屋理事ならではの苦労や発見がエピソードを交えて紹介されています。土壌肥料学(農学部)と地球化学(理学部)の違いをまとめた表があり、ここまで考え方のスケールや方向性が違うのか!と改めて驚く内容です。異なる学問分野(研究室文化)に身を移すというのは、外国どころか違う惑星で暮らし始めるくらいの感覚かもしれない…と想像してしまいました。

凌風丸
 気象庁の観測船、旧凌風丸

記事の中に「研究費は、自由のない2000万円より自由な20万円」という言葉がありました。なんとなくですが、富士山に集まる研究者には「自由な20万」の方が好きなタイプが多いのではないでしょうか。自由なフィールドサイエンスを富士山で体現されてきた土器屋理事の、そこに至るまでの道のりを知ることができる記事です。

本NPOの二人による執筆記事の紹介でした。大気環境学会会員の方はぜひご一読ください。また、会員でないけれど読みたいという方は、広報委員宛てにご連絡ください。あるいは、著者本人にご連絡くださればきっと読ませてくれるはずです。  
(広報委員・村田浩太郎)

土器屋由紀子、大気環境学会誌 59 (2), A73-A78 (2024). DOI: 10.11298/taiki.59.A73
横田久司、大気環境学会誌 59 (2), A79-A85 (2024). DOI: 10.11298/taiki.59.A79

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