太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

カテゴリ: 学会

本NPOが中心になって、富士山が望める御殿場のリゾートホテル時之栖で開催したACPM2017から10年が経ちました。
この間に、COVID-19感染症の世界的な広がりがあり、欧米中心の政治的不安定もあり、資金難から山岳の観測研究が危機に立たされる所も多いと聞いています。

しかしながら、その中で昨年届いたスイスのMartine Collaud さんから届いた「次回の集まりを計画中」というメールは希望の光でしたが、引き続き下記のご連絡がありました。

ACPM2027大会の事務局よりご連絡がありましたのでお知らせします。




お知らせ
次回「山岳地点における大気化学・物理シンポジウム(ACPM2027)」は、2027年4月13日~15日にスペイン・テネリフェ島で開催されます。

2027年4月16日には、イサニャ大気観測所への見学ツアーを予定しております。日程を確保ください!
詳細はウェブサイト https://www.acpm2027.com/ にてご確認いただけます。
随時更新されます。
2026/03/10 

世界の山岳大気の研究者たちは地球の大気が一つのつながりであることを身をもって理解しています。
それぞれの山のデータを持ち寄る会議ができることは、何よりも大切な時間です。
これからのこのグループの集まりに注目してご連絡したいと思います。

(広報委員会)
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— ニューオリンズから発信する、旧富士山測候所での観測で得られた雷起源高エネルギー大気研究の発表 —

2025年、アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズで開催された、アメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union: AGU)秋季大会(Fall Meeting)に、富士山測候所を活用する会の雷チームのメンバーが多数参加しました。

AGU秋季大会は、地球科学分野において毎年行われる世界最大級の連合学会であり、地球科学の非常に幅広い分野を網羅しています。アメリカ国内で開催される学会ではありますが、毎年、世界中から2万人規模の研究者・学生・技術者が集い、最新の研究成果について活発な議論が行われます。



今回の会場となったニューオリンズのコンベンションセンターは非常に広大で、会期中は早朝から夕方まで多くの研究者が行き交い、国や分野を越えた交流が自然に生まれる、活気に満ちた空間となっていました。

AGU秋季大会では、国・地域別の参加者数について公式な統計は公表されていませんが、日本は例年、アメリカ、中国、韓国などと並ぶ主要な参加国の一つとされています。今回の大会でも、日本の大学・研究機関に所属する研究者の姿が多く見られ、日本の地球科学研究が国際的に高い存在感を持っていることを実感しました。

今回のAGU秋季大会では、富士山測候所を活用する雷研究チームとして、富士山に関連する研究発表が計5件行われました。以下に、その概要を紹介します。



① 富士山におけるガンマ線グローと相対論的電子雪崩

カリフォルニア大学サンタクルーズ校 David Smith 教授のもとで、学部の卒業研究として行われた Isabell Kim さんの発表です。現在、彼女は他大学の修士課程で引き続き地球科学を研究しています。

研究内容は、富士山頂で観測されたガンマ線グローを対象に、相対論的電子雪崩(Relativistic Runaway Electron Avalanches: RREA)の規模を推定するものです。富士山測候所に設置されたガンマ線検出器の高時間分解能データを用いることで、個々の電子雪崩の特性に迫る解析が行われ、従来モデルとの比較を通じて、雷雲内での電子加速過程に新たな制約が与えられました。富士山という高標高環境ならではの観測成果にも注目が集まりました。

なお、彼女はポスター発表を行う若手研究者に与えられる5分間の口頭発表枠でも、本研究成果を発表しました。





② 雷・ガンマ線・大気化学の統合観測

次は、富士山測候所を活用する会 副理事長である鴨川仁(静岡県立大学 特任教授)による発表です。

ガンマ線、ロゴスキーコイルによる落雷電流測定、電磁波(VLF)、大気電場に加え、同じく夏期観測で行われる NOx や O₃ などの大気化学成分を同時に観測することで、雷放電前後の物理・化学過程を包括的に捉えた貴重な事例が紹介されました。富士山測候所が分野横断型の観測拠点として機能していることを強く印象づける発表となりました。



③ 雷放電における高エネルギー放射研究の総括

カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の David Smith 教授による総括的な口頭発表では、雷に伴う地上ガンマ線フラッシュ(TGF)やガンマ線グローの研究動向が、世界各地の観測事例を交えて俯瞰的に紹介されました。

発表の中では、富士山測候所で得られてきた観測成果も重要な位置を占めており、富士山が極めて近距離で雷に伴う高エネルギー現象を捉えられる希少な観測拠点であることが改めて強調されました。



④ 雷ステップ・アタッチメント過程におけるX線放射

次は、Smith 教授のもとで博士号取得を目指している Ronaldo Rodriguez さんの口頭発表です。

雷放電の中でも特に観測が困難なリーダ進展(stepping)およびアタッチメント過程に伴うX線放射を、富士山頂近傍に設置された THOR 検出システムで捉えた研究が発表されました。

NaI 検出器とプラスチックシンチレータの応答差を利用した新しい解析手法により、X線スペクトルの制約が試みられ、雷放電直前・直後の電子加速過程に迫る成果が示されました。



⑤ デジタル線量計 IRIS の開発と富士山での展開

最後に、Natalie Smith さんによる新型デジタル線量計 IRIS(Intense Radiation Integration Sensor)の開発と初期運用に関する発表が行われました。

IRIS は、従来の高感度検出器とは異なり、感度をあえて抑えた設計によって、極めて強い放射線環境でも飽和せずに測定できることを特徴としています。富士山を含む複数の観測拠点での展開実績が報告され、雷研究における計測技術の新たな可能性が示されました。



以上の一連の研究には、富士山環境研究センターの藤原博伸 研究員、安本 勝 研究員をはじめとした、富士山測候所を活用する会に参画する多くの研究者が、観測・解析の両面で大きく関わっています。

富士山という過酷な環境下での観測機器の維持・運用、長期にわたるデータ蓄積は、現地に根ざした継続的な取り組みなくしては成り立ちません。今回の成果は、こうした現場力と連携体制に支えられたものです。

学会発表を終えた後は、ニューオリンズの街でジャズの夜を楽しみながら、研究交流を深めました。この場には、静岡県立大学、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者に加え、富士山周辺の落雷電波波形データを継続的に観測している岐阜大学の 准教授も参加しました。

公式セッション外でのこうした交流は、次の観測や共同研究につながる大切な時間でもあります。人と人とのつながりが、研究を前に進める原動力であることを改めて実感しました。









今回のAGU秋季大会への参加を通じて、富士山測候所を核とした雷・高エネルギー大気研究が、国際的な研究ネットワークの中で確かな位置を占めていることを改めて確認することができました。

富士山測候所を活用する会は、今後も富士山環境研究センターをはじめとする関係機関、国内外の研究者との連携を大切にしながら、富士山という唯一無二の観測フィールドを活かした研究活動を継続・発展させていきます。

(広報委員会)
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8月28日、姫路商工会議所で行われている「第42回エアロゾル科学・技術討論会」に出席中の三浦和彦理事長から下記のような素晴らしいメールが飛び込みました。



本日のエアロゾル学会総会にて、畠山先生が日本エアロゾル学会名誉会員に推戴されましたので、報告いたします。
推薦者は島田さん、大河内先生他の皆さんです。
写真を島田さんに頂きましたので、添付します。
とりあえず、ご報告まで。



 兼保直樹会長(本NPO理事)から名誉会員の任命を受ける畠山史郎富士山環境研究センター長


 名誉会員に選ばれた畠山史郎センター長:2025年8月28日、
 提供:島田幸治郎・琉球大学助教(上の写真も)


推薦理由として、
畠山史郎先生は、長年にわたって大気環境化学の研究に従事してこられたこと。
特に大気中における粒子状物質の生成に関わる大気化学反応、オゾン層破壊や、地球温暖化や酸性雨問題など地球環境問題における粒子状物質の輸送プロセスにおける変質の解明など多くの研究業績と論文、環境行政の分野で、環境省中央環境審議会はじめ東京都、千葉県、埼玉県での多くの環境市議会等の委員。日本エアロゾル学会内の活動、編集委員会、2度にわたる会長、国内外の受賞(Hagen-Schmidt賞、大気環境学会学術賞など)に加えてエアロゾル学会の運営における多大な功績と発展への寄与が挙げられました。

更に、この学会では、三浦理事長をはじめとした富士山測候所を利用した研究発表(2題)も行われています。
富士山麓で測定したエアロゾル数濃度と推定した雲凝結核濃度の比較
(富士山環境研究センター、東京理科大学)三浦和彦
(東京理科大学)永野勝裕(早稲田大学)大河内博、速水 洋(東京都立大学)加藤俊吾
(帝京科学大学)和田龍一(石川県立大学)皆巳幸也(山梨大学)小林拓
(慶應義塾大学)森樹大(京都大学)矢吹正教(広島大学)岩本洋子
(名古屋大学)上田紗也子(富山大学)青木一真(静岡県立大学)鴨川仁

大気エアロゾルの磁気特性 (4)-2024年での富士山頂での観測と解析(東洋大学)上野 千嘉・反町 篤行 (埼玉県環境科学国際センター)米持真一・村田浩太郎
(早稲田大学)大河内博


 ポスター発表で説明する三浦和彦理事長


 ポスター発表の様子 提供:原圭一郎・福岡大学助教(上の写真も)

福岡大学の原圭一郎先生から写真を提供していただきました。
原先生には、本NPOの第2回成果報告会(2009年1月)に特別講演をしていただいたことがあります。

今年も、秋の学会シーズンですが、幸先の良いスタートを切っていますね。

(広報委員会)

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2024年9月11日〜13日に開催された第65回大気環境学会年会(慶應義塾大学日吉キャンパス、横浜市)にて、本NPOの加藤俊吾理事(東京都立大学)が指導する野田琴音さん、青木紳悟さんが学生・若手研究者優秀発表賞(ポスター部門)を受賞しました!

野田琴音さん(東京都立大学)
「富士山麓の太郎坊におけるCO、O3、SO2の長期観測」


 左から、奥田知明年会長(慶應義塾大学)と野田さん(撮影:村田浩太郎)

青木紳悟さん(東京都立大学)
「電気化学センサーを用いた富士山近傍での火山ガスモニタリング」


 左から、奥田年会長と青木さん(撮影:村田浩太郎)

西日があたって過酷な暑さのポスター会場でしたが、それに負けない熱さの発表でした。


 発表の合間の一枚。左から、村田浩太郎理事、渡辺幸一会員(富山県立大学)、野田さん、米持真一会員(埼玉県環境科学国際センター)(撮影:土器屋由紀子)

懇親会中に執り行われた授賞式では、「富士山測候所を活用する会」チームで集まって受賞者を囲みました。


 左から、和田龍一理事、皆巳幸也事務局長、南齋勉理事、土器屋由紀子理事、野田さん、青木さん、加藤俊吾理事、横田久司東京事務所長(撮影:村田浩太郎)


 東京都立大学チームの3人で一枚。嬉しそうな加藤理事(撮影:村田浩太郎)

もちろん、他にも富士山関係の素晴らしい研究発表が行われました。
小山有宇理さん(東京都立大学)
「夏季富士山頂における大気汚染物質の長期観測と経年変化」


 写真右端が暑い中頑張って研究の説明をする小山さん(撮影:土器屋由紀子)

 岡本大地さん(静岡理工科大学)
 「富士山麓におけるドローン採取による単一雲滴分析に基づく雲成長過程の検討」

  皆巳事務局長(手前)に説明している岡本さん(奥)(撮影:村田浩太郎)

南齋勉理事(静岡理工科大学)
  • シンポジウム「自身の強みで切り開く大気環境研究の道 〜心事の棚卸し〜」
  • 市民集会「大気観測におけるドローンの最新技術の利活用 講演とデモ飛行」での「ドローン飛行に関するルールとドローンを用いた雲粒サンプリング研究の紹介」
どちらのイベントも100名は軽く超えるほどの参加者の中、太郎坊でのドローン観測や富士山頂での雲粒採取の取り組みと共に、本NPOの紹介がしっかりと入れ込まれていました。


 シンポジウムでの講演スライドから本NPOの紹介部分(提供:南齋勉)

成果はいつも賞のように華やかなものとは限りませんが、皆それぞれ懸命に研究を進めているところです。
これからも富士山での研究に取り組む学生たち・研究者たちの頑張りに応援をよろしくお願いします!


(広報委員会・村田浩太郎)
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また、会員を募集しています。
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2024年8月20~22日に工学院大学八王子キャンパスで開催された第41回エアロゾル科学・技術研究討論会にて、三浦和彦理事長と村田浩太郎理事による研究発表が行われました。

三浦理事長の発表は「富士山麓太郎坊で測定したエアロゾルの濃度変化(2)」というタイトルで、2017年~2023年の太郎坊での観測で得られたエアロゾル粒子(液滴あるいは固体微粒子)の粒径分布や気体成分がエアロゾル粒子に変化する「新粒子生成」現象について、大気化学グループによって観測されている様々なデータを統合して考察されたものです。


三浦理事長の発表スライドの表紙。当NPO理事をはじめ、会員も共同研究者として名を連ねています。


村田理事の発表は「2023年夏季の富士山頂大気中における氷晶核数濃度および細菌群集組成」で、2023年の山頂夏期観測で得られた、山頂大気中の氷晶核と細菌群集の変動とその要因と生物氷晶核の出現と共に検出された細菌について解析したものです。


村田理事が発表したポスター。ポスターセッション中は写真を撮る余裕がないほど質問をいただきました。
(撮影:村田浩太郎)


学会には畠山史郎理事や兼保直樹理事(次期日本エアロゾル学会長)、小林拓理事の参加もありました。


畠山理事(手前)と兼保理事(畠山理事の3列後の中央)(撮影:三浦和彦)

また、会期の前日である19日には、学会プレイベントとして日本エアロゾル学会若手会による第19回若手討論会「個別粒子分析を語ろう」が開催され、本ブログでも過去に紹介された、上田紗也子会員による招待講演「大気エアロゾル粒子の観察から個性の価値を考える」も行われました。上田会員がこれまで行ってきた個別粒子分析に関する研究の歩みや、電子顕微鏡での粒子の観察、船の上での観測の様子など貴重な写真が豊富で、経験談を踏まえた楽しいお話でした。馬の背手前で富士山測候所をバックに撮った写真もありました。

きれいな顕微鏡写真を見せて解説をする上田会員(撮影:村田浩太郎)

晩夏からは多くの学会が開催されるシーズンです。大気化学や雷関係では、
9月11日〜13日は第65回大気環境学会年会(慶應義塾大学日吉キャンパス)、
1月10、11日は日本大気電気学会第103回研究発表会(静岡県立大学グローバル地域センター)が開催されます。

今年も夏に取ったデータを解析しつつ、これまでの結果を学会で議論する、実りある秋を迎えつつあります。
(広報委員会・村田浩太郎)
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