太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

カテゴリ: 研究速報

夏期観測における雷・大気電気研究分野では
複数のプロジェクトが動いていますが今回は雷放射線の研究チームについての話題です。

雷放射線の研究チームはカリフォルニア大学サンタクルーズ校のDavid Smith教授らのグループです。
近年、同グループが開発したTHORと呼ばれる雷放射線測定機器を山頂に設置し、2022年、2023年の
2年では地球ガンマ線フラッシュと呼ばれる雷放電時の放射線を捉えることに成功しています。
そして12月中旬に行われるアメリカ地球物理学連合秋季大会で2022年での成果を発表するために
日本から鴨川専務理事が、サンタクルーズ校に訪問し、発表についての最終確認や
過去富士山で取得したデータの検討を行いました。

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 カリフォルニア大学サンタクルーズ校は森の中にあり、校内は自然と調和している。

今回David Smith教授だけは、打ち合わせ直前にCovidにかかったため、対面での打ち合わせはできず
Zoomでかつ咳で会話ができないためチャットで対応という自体に。

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 David教授だけはZoomで打ち合わせに参加。

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 取得データについて様々な解釈をホワイトボードを使って議論。

今回の鴨川専務理事の訪問は、打ち合わせだけでなく、低消費電力で動くTHORのmini版、
mini THORを手荷物として持ち帰るための大きな目的がありました。

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 Mini THORは2024年の富士山で設置が予定されいます。

2023年取得されたデータについては、3月の成果報告会でSmith教授が発表すると思いますので楽しみにお待ち下さい。(文責:鴨川仁)

2023年の夏期観測も雷グループは良い成果を得られたようです。成果報告会が楽しみです。
(広報委員会)


認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

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  スプライトの写真(2013年7月22日)


世界的な学術誌Atmosphereに上の論文が掲載されました。
NPOメンバー、鈴木智幸博士、鴨川仁専務理事、藤原博伸研究員らが連名で、
富士山頂で観測されたスプライトに関する論文です。
以下に鈴木博士による簡単な説明をご紹介します。

・論文の簡単な説明
 雷雲の電気的な活動に伴う放電現象は、雷雲内及び落雷のみならず雷雲上空でも発生しており、総称して高高度放電発光現象と呼ばれている。富士山山頂は、見通しがよく、下層雲よりも高い位置にあるため、高高度放電発光現象とその原因となる雷雲内の放電発光及び雷雲そのものを横から撮影できるという利点を有している。富士山山頂での光学観測は2012年から開始し、2013年7月22日に富士山山頂から初めて、高高度放電発光現象の一つである、雷雲内の大きな正電荷の中和に伴い発生する巨大な高高度放電発光現象のスプライトが6事例撮影された。そのうち5事例は、宮城県の太平洋岸で発生した大きな正極性落雷に伴い発生し、この正極性落雷は巨大な雷雲の層状エコー域下で発生したことが分かった。層状性エコー頂が対流性エコー頂から切り離された以降もスプラトが発生していた。幸運なことにこの層状性エコー域直下では気象庁のウインドプロファイラが稼働しており、スプライトの原因となった層状性エコー域のウインドプロファイラの観測から、層状性エコー域内では弱い下降流が卓越しており、層状雲下部では、エコー強度が強まっていた。このことから、層状雲内部に蓄積していたと思われる正電荷は、層状性エコー内で生成されていた可能性が示唆された。一方、1事例のスプライトは福島県の巨大な雷雲の対流域付近で発生した正極性落雷により発生しており、富士山山頂から撮影された動画から、少なくとも150msの連続電流に伴う雷放電発光が見られ、この雷放電によりスプライトが発生していたことが分かった。

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富士山頂で観測する鈴木博士

富士山頂が、遠方の雷関連現象を観測するのに素晴らしい観測サイトであることが、また一つ明らかになった嬉しいご報告です。

(広報委員会)





認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは

2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。


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(一財)WNI気象文化大賞(第11回)に選ばれた富士山環境研究センター安本勝研究員

今年の山頂観測は、9月3日をもって終了しました。65日間に26のプロジェクトが実施されたなかで、今回は雷による電流を富士山頂で測る研究について紹介します。このプロジェクトは、落雷の際に山頂の旧測候所と山麓をつなぐ送電線内の接地線(アース)に流れる電流を、分割形ロゴウスキーコイルを用いて計測することで、雷現象を観測するものです。

接地線の長さが7km以上もあり、しかも周辺に他の送電線がなくノイズが少ないことから、
他に類を見ない非常に高い感度で雷に起因する電流を観測できます。

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          山頂で観測中の安本研究員設計の装置

2012年に研究を始めた当初は測候所への直撃雷電流の測定を目的としていましたが、その後、直撃ではなくても、遠方雷、誘導雷、上向き雷放電などの雷現象によるシグナルが捉えられることが分かってきました。なかでも、上向きの雷放電はごく珍しいとされ、夏季の落雷全体の1%に満たないと考えられています。しかし、この発生率は、未だによくわかっていません。

富士山環境研究センター(LERMF)の安本研究員による雷電流の計測プロジェクトは、
(一財)WNI気象文化創造センターによる2021年度気象文化大賞に選ばれ、
その助成を受けて実施されました。


2021年の夏季観測において、8月18日に負極性上向き雷の直撃雷が測定できました(下図)。
全体で測定は1万回以上できていますが、マニュアル処理出来る量ではないため、
高高度発光現象やLLS情報から絞り込んで解析を進めます。

下向き雷
 
なお、旧富士山測候所から撮影した雷の一例を下に示します。
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 2021年8月30日測候所から見た雷の一例(撮影:岩崎洋山頂班長)  

今後の解析によって、上向き雷放電を始めとした現象の多角的な理解が進むと期待されます。成果は2022年3月開催予定の第15回成果報告会で発表される予定です。

安本研究員のユニークな手法の研究のこれからにご注目ください。

2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かかるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。





(広報委員会)

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花冷えの3月25日、鴨川事務局長とNYジオフィールド社の2名が太郎坊に到着。

前夜から御殿場事務所に泊まり込んでいた鴨川事務局長の立会いの下に、
運び込んだ資材の組み立てが始まりました。

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太郎坊観測タワーとは
2020年度・年賀寄附金
「日本の自然環境・生活環境を保全するための
富士山頂における越境大気汚染物質の観測事業」
の一環として行われたものです。

折からのコロナ禍中山頂の施設が使えないと言う条件で、関係者が知恵を絞って、
昨年12月にはドローンの観測を行いましたが、
その中で、大気電気関連の連続的観測のため、
8mの観測鉄塔を設置したものです。

予算の範囲内で、
最大のパーフォーマンスを得るために計画されたもので,
2.5mの支持三角台に8mの高さのアルミ柱から成って居り、
各種センサーを搭載できます。

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スコリアの地面に、
環境保護のためコンクリートの土台を作らないで
設置するための工夫がなされています。

年度末の3月ですが、周辺の観測機器への影響などを考え、
また最も効率の良い観測環境を考慮した周到な準備の下に、
設置作業は10時にスタートして、
16時42分に無事に終了しました。

春とはいえ、
1300mの太郎坊はまだ冬の寒さです。
NYジオフィールドのみなさん、
鴨川事務局長お疲れ様でした。

今後このタワーから、
様々な観測データ(気象測器、ライブカメラ、大気電場など)が
発信されることを楽しみにしています。

(広報委員会)

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「第14回 成果報告会」の講演予稿集 

2021年3月28日(日) 13時~16時30分まで
認定NPO法人 富士山測候所を活用する会の
「第14回 成果報告会」が行われました。

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成果報告会のニュースリリース


2020年度は富士山頂での夏季観測が中止になりましたが、
太郎坊基地や御殿場基地事務所での観測結果や、
富士山頂で測定した過去15年間に渡るデータを活用した
「大気(富士山頂)」、「大気(富士山麓)」、「雷・噴火など」の
3つのセッションで構成された16件に及ぶ発表となりました。

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加藤俊吾成果報告会実行委員長からの
開会宣言から始まり、
続いて三浦和彦理事長の開会の挨拶、
そして2020年度観測の概要を
皆巳幸也副実行委員長が説明しました。


リモートで山頂通年観測が行われている国立環境研・野村渉平博士の報告です。
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コロナ禍による大陸の産業活動の低下の証拠が
見られる地点を探して日本のいくつかの観測地点のデータを調べましたが、
富士山以外の観測地点では、はっきりせず
“富士山頂が最良の観測地点“であることの証明になりました。

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大河内博副理事長によるこれまでの観測のまとめ
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このほか、三浦和彦理事長、鴨川仁事務局長、和田龍一理事によっても、
わかりやすいまとめの講演と最近のトピックスが話されました。


講演の中には、学生による発表(発表時間10分)もありました。
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ドローン観測に関する石川翔さん(早稲田大)の発表
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富士山での大気中マイクロプラスチック観測に関する報告 趙鶴立さん(早稲田大)

学生の発表は合計6件ありました。

続いて
静岡県立大学 鈴木智幸さんは、
2013年以来の富士山頂と宇宙の間の発光現象について報告。
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その一部で、「青天の霹靂」のメカニズムの解説がありました。
雷観測と避雷技術(安本勝氏ほか)の開発における富士山の有用性が再確認されました。


2020年スタートした長尾年恭理事らによる太郎坊での地磁気観測。
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今後、山頂でも地磁気観測が行われるとのことで、
最後に報告された加藤俊吾理事の火山性ガスの測定と
併せて富士火山の噴火予知への利用が期待されます。

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鴨川仁副実行委員長の最後の挨拶に、
富士山頂だけでなく、御殿場基地事務所なども観測サイトとして
活用に有用であるお話もありました。


参加者は、77名と大盛況でした!!
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(参加者の一部の方の写真)掲載させて頂きました。ありがとうございます。

富士山という同じフィールドで
多岐にわたる分野の研究の成果を集中的に
聴けるという充実した時間となりました。

次年度の成果報告会も楽しみとなる
有意義な時間となりました。

(広報委員会)

なお、最後に広報委員会からお詫びとお願いです。
予稿集の表紙に入れ忘れた会議の期日を下記のように追加お願いします。

<期日:令和3年(2021年)3月28日:13:00-16:25(オンライン開催)>

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