太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

カテゴリ: その他


 『富士山で俳句教室』(堀本裕樹、角川文庫、2024)

        いとうそうふう いとうさだのぶ
久しぶりに表題の伊藤霜楓(伊藤定亘)氏の句に新刊の文庫本でお目にかかりました。
こちらは発売中の文庫本の可愛らしい表紙ですが、その157ページ「雪と富士」の項目の中にあります。

今年の5月、事務所経由で著者の堀本氏に協力しているライターの方から問い合わせがありました。
八合目長田尾根にある登山路建設記念碑についてのものでした。
                             おさだてるお
この「記念碑」は、1958年2月の交代勤務の登山中に殉職された長田輝雄氏が後輩の登山の安全のために勤務時間の合間に整備しておられ、彼の没後に仲間たちが完成させた登山道「長田尾根」に設置されています。測候所の職員として後輩の登山指導に当たり、慕われていた彼の殉職は当時の職員全体にとって大きい衝撃でした。

八合目の長田尾根の「句碑」には

  いつ水の 流れしあとや 蕗の薹 長田輝峰 (長田輝雄氏の俳号)
  ひせつおね
  飛雪尾根 聲あげて聲 奪はるゝ 伊藤霜楓

が刻まれています。

一方、上の本で、伊藤霜楓氏の代表句としては
        わら
  氷壁や 死神哄ふ とき突風  伊藤霜楓

が挙げられており、作者が富士山測候所で働いていた所員であったことも記されています。

本NPOの発足の当初、関係者で作った書籍に『変わる富士山測候所』(江戸川大学・土器屋由紀子ゼミ編、春風社、2004)があります。まだ、ご存命だった伊藤定亘氏にも執筆をお願いしたところ、「人魂」(ひとだま)という題で、長田輝雄氏の殉職の模様を感動的な文章で書いて下さいました。その中に句碑の話もあります。

当時、長田氏は「そよ風の輝さん」と呼ばれていました。山頂の20m/sを超える強風について、「こんなのはそよ風だよ」との口癖が由来とのことです。強力(ごうりき)の経験もあり、富士山を知り尽くしておられた長田氏でも防げなかった殉職は、富士山の気象を侮ってはいけないという教訓になっていました。ちなみに、本ブログのタイトル「太郎坊のそよ風」は、ブログを始めた前任者(中山良夫氏)が
長田氏の口癖の「そよ風」を頂いたとのことです。

この句に20年ぶりに再会しましたが、編集を手伝った当時の江戸川大学の学生たちが伊藤氏の文章に感動して涙したことを思い出します。富士山測候所の利活用を目指すNPO活動を始めるにあたって、「日本一過酷な公務員」と言われていた先人の苦労を歴史の一環として心に刻みました。

あれから20年立ちました。
富士山測候所で研究者が滞在できるのは夏の2ヶ月ですが、マイクロプラスチックや、雷やNOx、高所医学などの新しい研究成果が最近では世界に知られるようになりました。
苦労された先輩たちは喜んでくださっているのではないでしょうか?

(広報委員会、土器屋由紀子)

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 ハイブリッドで開催された第15回芙蓉日記の会 (2024年4月29日)

「ダンボールに一杯の新聞コピーがあるけど、どこかに引き取ってもらえないか?」
『芙蓉日記の会』の名付けの親で、会を始める切っかけとなった大森久雄氏から尋ねられたのは、2019年のことです。

ダンボールの中身は、大森氏が国会図書館でマイクロフィルムから「野中至」の文字だけを頼りに片っ端から探しだすといった大変な苦労の末に入手されたもの。欄外には、赤文字で当時のメモもあります。

その成果は『新選覆刻日本の山岳名著 解題』(日本山岳会企画編集、1978)の中の大森久雄「野中至『富士案内』(明治34年8月春陽堂刊)や『野中至 富士案内 野中千代子 芙蓉日記』(大森久雄編、平凡社ライブラリー、2006)として刊行されていますが、利用されなかった資料など、当時の実情を知るための膨大な情報が含まれています。

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(左)『新選覆刻日本の山岳名著 解題』(日本山岳会企画編集,1978)(右)大森久雄編『富士案内・芙蓉日記』(平凡社ライブラリー, 2006) 

NPO事務所が手狭になった千代田区半蔵門のアパートから、新宿区大久保の広めの事務所に引っ越したのは、その2年後の2021年。引っ越しを機に同好会「芙蓉日記の会」も待望の専用のロッカーを入手、富士山環境研究センターの作業スペースの借用も可能になり、大森氏の「ダンボールの資料」の受け入れ準備ができました。

大森氏の「段ボールの中身」は芙蓉日記の会に寄贈され、さらに溝口克己氏等からも別途収集された当時の新聞コピーを寄せられたのをきっかけに、本会では明治時代の新聞資料のウェブサイトへ掲載作業に着手。紙面をスキャナーで読み込み、デジタル化された画像はすでに資料館アーカイブに登録が完了しています。

ウェブサイト掲載にあたっては、明治時代の文章はこのままでは読み難いため、新聞紙面とあわせ、その紙面のテキスト起こしをするとともに、常用漢字外の字、人名・地名・専門用語、難読と思われる字にはルビをつけ、当時の新聞記事にはついていない句読点を補いました。

この結果、単語の「ページ内検索」が可能となり、調べるときなどは各段に便利になりました。例えば「和田雄治」でページ内検索をすると該当箇所にマーカー付きで沢山ヒットします。


さらにわかりやすくするため、旧字旧仮名を新字新仮名に書き換え併記することにしています。この変換
には『富士案内 芙蓉日記』(大森久雄編、2006,平凡社ライブラリー)の「凡例」にその方法について記載があったのを参考にし、これに準じて行なうことにしました。

ただし、『芙蓉日記』など既に一次資料として印刷されたものについては上記の本を参照していただくことにして、ここでの作業の対象には含みません。 


❶文字表記を新字にする(除く人名、地名)

・気象臺→気象台


❷文字表記を新仮名にする

・被ふ→被(おお)う

・準備に怠りなしと云ふ→準備に怠りなしという


❸漢字表記のうち特定の語を仮名にする

・為に→ために

・其の他→その他


句読点を補う(当時の新聞記事には句読点がついていない)

・五六寸→五、六寸


❺総振り仮名は適宜整理

・ルビをつける漢字は、ブロックごとの初出の漢字とする。

・パラルビは、常用漢字外の字、人名・地名・専門用語、難読と思われる字につける


1895(明治28)年9月1日の東京朝日新聞の記事を下に示します。

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  1895年(明治28年)9月1日 「富士山の測候所」ど題した 東京朝日新聞の記事

芙蓉日記の会では、上の画像で示した新聞記事の赤で囲った部分の解読とそのチェックを行い、「旧字旧仮名(原文そのまま)」(白地に青色のルビ)と並べて「新字新仮名」(クリーム色)で読める形で示す作業を、昨年末から始めています。


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「旧字旧仮名(原文そのまま)」(白地に青色のルビ) と並べて「新字新仮名」(クリーム色)

作業は地味なものですが、読んでゆく過程で「こんなことがあったのか !!」というような新しい
発見に満ちています。段ボールいっぱいのコピーは興味深い情報の宝庫です。興味のある方は参加されませんか。


「野中至(到)・千代子」に関する正確な資料を集めてウェブサイトで公開を目指す「芙蓉日記の会」の活動に参加を希望される方の、ご連絡は
こちらからお願いします。


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(注)著作権の取り扱いについて:
100年以上経過しているので著作権については既に問題がないと思われましたが、新聞社のとりまとめをおこなっている(一社)日本新聞協会にも問い合わせしたところ、すでに著作権については消滅しているので、ウェブサイトへの掲載は問題がないとのことでした。しかし、掲載にあたっては一応各新聞社にそのことを伝え了解をとるようにしました。
その結果は、電話だけでOKの新聞社(読売新聞など)、メールによる依頼とメールによる回答(朝日新聞など)、文書による伺いで文書による回答(山梨日日新聞など)と、各社各様の対応でした。

(芙蓉日記の会)


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渋谷の忠犬ハチ公の像は「待ち合わせ場所」でおなじみですが、
飼い主だった東大農学部教授・上野英三郎(ひでざぶろう)先生と仲良く遊んでいる銅像もあることをご存知でしょうか?

240518上野先生とハチ_
 ハチ公没後80年とされる2015年3月8日に東大農学部正門脇左側に建立

渋谷ではなく、当時渋谷近くにあった駒場農学校の移転先・文京区弥生町の東大農学部キャンパスに、2015年に建てられて今年は10年目を迎えています。
「ちょうど学園祭だし、いろいろなグッズも販売中ですよ」
と古い知り合いに誘われて「ご当地グッズ大好き人間」の芙蓉日記の会の3人で5月18日に遊びに行ってきました。
確かにありました!
東大農学部の正門を入ってすぐ左手、外装修理中のビルの前にさり気なく置かれていています。

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 東大農学部資料館、農学部正門から入って右側

農学部正門の右側には資料館もあり、そこでグッズ販売が行われていました。

グッズ
 Tシャツ、絵葉書、ぬいぐるみ、ボールペンなど多数、毎月8日の「ハチの日」
(10時ー16時)はボランティアによる説明やグッズの販売が行われています。

資料館にはハチの内蔵の標本もあり、死因はフィラリアだったとか、獣医学科の研究者たちによる調査も展示されています。解剖結果によると、胃から串がたくさん出てきたようで、ハチは駅前の焼き鳥が目的だったという説もありますが、2009年には米国映画「Hachi 約束の犬」(リチャード・ギア主演)として評判にもなりました。2015年に建てられたこの像も、上野先生とハチ公にスポットが当たるきっかけになっているようです。

上野英三郎教授(1872-1925)は日本の農業工学の創始者として知られていますが、当時、深刻な社会問題であった足尾鉱毒事件で、田中正造議員の依頼で渡良瀬水域の銅イオンの分析を行った古在由直(こざいよしなお)東大農学部教授(後の総長)とともに、渡良瀬沿岸土壌の調査も行っておられたとのことです()。
もしかしたら、そのような調査旅行へ出かけたと思って、帰ってこられなかった上野先生をハチ公は渋谷の駅で10年待ち続けたのかもしれないですね。

ハチこうやき
 学園祭では「ハチ公焼き」もありました

ハチ公焼きshou
 ハチ公焼き、餡といぶりがっこの2種類です

富士山測候所の創設者・野中至(1867-1955)・千代子(1871-1925)夫妻と、ほぼ同時代の上野英三郎先生との直接の接点は見つかりませんが、5月18日に見学した「上野先生とハチ公」グループの活動は多方面からのアクセスされる楽しい活動でした。
本NPOもいろいろ参考になることがありそうです。

注:熊澤喜久雄「足尾鉱山鉱毒事件を巡る農学者群像(続)ー谷中村の貯水池火問題と鉱毒被害地の改良ー、肥料科学、37,1-74(2015)

(広報委員会)


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横浜市、鶴見川土手の桜(2024年3月31日、晴れていると右端、日産スタジアムの横に富士山が見えます)

関東地方では例年になく遅かった桜がやっと満開になったと思ったら、その後の大雨で散ってしまいました。各新聞のコラムにも「花に嵐」の文字が飛び交っていましたが、季節は一気に夏に近づいています。

ところで、「桜」と「富士山」は古くから日本のベタなイメージキャラクターですが、その関係は・・・というと、富士山本宮浅間大社が祀る女神がコノハナサクヤヒメ(「桜の花の咲くように咲き栄える女性」)Wikipedia) だからと言えるかもしれません。

2013年に中日新聞/東京新聞夕刊のコラム「紙つぶて」に「富士の女神」というタイトルで書かせて頂いたことがありましたが、その執筆にあたって「コノハナサクヤヒメ」の文字について、中日新聞の編集担当の日比野雅彦氏(現:テレビ静岡取締役)と何度かメールの往復をしたことを懐かしく思い出します。「姫」「姫命」「比売」「昆売」などについて、岩埼洋山頂班長や民俗学に詳しい古い友人の忠告もあり、結局「木花之佐久夜昆売」に落ち着きました。

そのコラムでは初冠雪の富士山が御神体とされる八合目より上に雲がかかっていたため、
「横浜から遥かに仰ぎ見たこの朝は、ご祭神の木花之佐久夜昆売が初化粧を見られるのをためらっておられるようでした。人間たちの世界遺産騒ぎにご不興でなければよいのですが」
と締めくくりましたが、あれから十年経ちました。

世界文化遺産富士山も本NPOの旧測候所の利活用もなんとか続いております。
これからも、たとえ嵐があっても毎年花を咲かせる桜のように、末永く続けてゆきたいものです。
(広報、土器屋由紀子)

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 東京事務所入り口付近で2023年10月31日)

10月31日お昼前に、芙蓉日記の会のMartin Hoodさんが、スイスのチョコレートを持って東京事務所を訪問されました。福井に一週間の短期滞在のなか、貴重な一日を使って東京事務所までわざわざ日帰りで往復されたのです。

芙蓉日記の会からは、大森久雄様と佐藤政博監事、土器屋理事が参加して、
「ミニ芙蓉日記の会」の雑談をしました。
まず、大河内理事の英紙The Gardianに載った記事の話から始まりましたが、
この新聞は日本でいえば朝日新聞のようなもので、
近年は環境問題を熱心に取り上げているとのことです。
スイス在住の英国人・Matin Hoodさんにとってもガーディアンに載るのは
「大したこと」で前回のブログのお祝いメールになりました。
「第何面のどのくらいの大きさの記事ですか?」という古い世代の質問には、
「紙の新聞ではなくネットで見ている」とのこと。
紙の新聞が減っているのは、やはり世界的風潮であることを再確認しました。

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 富士山環境研究センタースペースで(2023年10月31日)

出版されたばかりの『ようこそ!富士山測候所へ』(長谷川敦著:旬報社、2023)を見ながら、
大河内理事の写真や、佐藤監事の昔話を聞いたり、
近いうちに出版予定のフッド晴美氏の英訳『芙蓉日記・富士案内』の挿絵などについて話が弾みました。
芙蓉日記の会の基礎資料・平凡社ライブラリー版『野中至・富士案内、野中千代子・芙蓉日記』(大森久雄編、2006)の編者である大森氏の説明によると、野中至の『富士案内』の挿絵は、至の友人で画家の中村不折氏の絵から選んだとのこと。
明治の書家・画家として著名な中村不折氏の写真をウェブサイトで確認したりして楽しいひと時でした。

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 中村不折画伯(中央)左:野中至、右:野中恭子(1936年11月3日撮影:『野中至(到)・千代子資料館』より)

トップの写真を含めて、最後に事務所の皆さんも入って記念写真をとりました。

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 東京事務所の事務コーナーで 「2023年10月31日)

夏期観測の反省会も終わり、来年に向けての始動期の秋の一日でした。
(広報委員会)


認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

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