太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

カテゴリ: 富士山環境研究センター

みなさま、本NPOは2020年度より文部科学省の科学研究費申請団体に認定されました。その後、これまでに何人かの研究者が本NPOからの申請を試みて参りましたが、2024年度、筆者を代表とする科学研究費・基盤(C)「電磁気学的データの高度情報処理を主とした富士山噴火予測精度向上の研究」が採択されました。
メンバーは研究代表者・長尾年恭(本NPO富士山環境センター・シニアリサーチフェロー)、研究者分担者・上嶋 誠(東京大学地震研究所・教授)さんおよび本NPO専務理事(当時)・鴨川 仁(静岡県立大学・特任教授)さんの3名です。
今回は富士山の研究という事で、鴨川専務理事の所属も本NPOとして申請しました。

最近の科研費の審査は、昔とは違い、大学による過去の採択実績(ある意味ヒエラルキー)等は考慮されなくなったようです。実は30年ほど前は、旧制帝大、旧一期校、旧二期校(若い方には、ご存じない方も多いのでは?!)で、採択率がおおよそ決まっていた時期もあったのです。そのため、この事に気がついたある大学が、「申請数を倍にすれば採択数も上昇するはず」という事に気が付き、全学をあげて申請数を増やしたという事もありました。
もちろんそんな事は今ではありませんが、やはり申請において、研究内容だけでなく、過去の業績というものが重視されていた事は否めませんでした。そのため、過去に論文の少ない人の申請が採択されにくかったのも事実です。これは当時はGoogleに代表される検索システムが存在しなかった事も大きかったと思います。ちなみにGoogleが日本語検索に対応したのは2000年でした。
また、科研費申請において、申請書の罫線(指定の枠内に書類や図を記載する)が、特にMS Wordを使って申請書を作成する場合に非常に操作性がわるく、図がずれるとか罫線が乱れる等が発生し、研究者の労力を大いに奪っていました。
さらに研究費が採択されたかどうかは4月になってから発表されていました。そのため科研費でポスドクを雇用するような研究計画では、4月からの雇用が不可能であったのです。

これに一石を投じたのが、河野太郎氏です。2020年、当時行政改革担当大臣であった河野氏は科研の採択通知を2ヶ月早め2月に発表するという改革を実行したのです。
さらに河野氏は2016年に上記罫線問題をあっという間に解決したのです。詳しくは下記の記事をご頂ければと思います。


次は以前の申請書を枠内にきちんと収めていた時代の申請書です。図を入れると文章がずれてしまったり、とにかく形を整える事に大きな時間を割く必要がありました。

次の例は罫線が存在していた時代の申請書です。

スクリーンショット 2024-05-28 7.03.50

また次は今回採択された科研費の申請書の一部です。申請書を作成する労力が罫線や枠がなくなった事により大きく低減されたのです。

スクリーンショット 2024-05-28 7.07.14

さらにここ数年は科研費申請のためのフォーマットも大きく変わってきました。特に申請者の過去の業績が重要視されていました。それが当たり前の事ですが、申請者の過去の業績だけではなく、申請書の内容重視で審査されるようになったのです。
採択に向けて特に重要なのは、申請書に記載を求められている事項をはっきりと第三者にもわかるように記載する事と、さらにその分野の専門家ではなく、他の分野の研究者にも「この研究は重要だ」と判ってもらう事がより必要になってきました。

科研費は申請書の作成分量が採択される研究費の額に対して比較的少なく、また純粋な競争的資金であるため、その採択実績はある意味、研究者にとっての評価とも言えるものです。そのため、申請書は十二分に推敲し、時間をかけて作成し、さらにその段階で可能なら近くにいる他分野の研究者にも読んでもらう事が重要だと考えます。
また科研費は原則、常勤・非常勤、有給・無給を問わず申請できるもので、日本の基礎科学を支える最も重要な研究費だと思います。ただ、科研費申請が認められた機関から申請する必要があり、本NPOが科研費申請団体となった事は、たとえば富士山に関心のある高校の教員等も申請するチャンスが生まれた事になります。そのためにも本NPOから申請し、基盤研究(C)が採択された事は喜ばしい事であったと考えています。
(文責:長尾年恭)


(広報委員会)
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3月に入って嬉しいニュースです。
長尾年恭・富士山環境研究センターシニアリサーチフェロー(本NPO理事)の
「電磁気学的データの高度情報処理を主とした富士山噴火予測精度向上の研究」が
令和6(2024)年度基盤研究(C)(一般)に採択されました。

長尾理事、東京大学地震研究所・上嶋誠教授と本NPOの鴨川仁専務理事の共同研究です。

概要は
「富士山は1707年の宝永の噴火以降沈黙が続いている。しかし人間で言えば二十歳程度の非常に若い火山のため、火山学者のコンセンサスとして将来確実に噴火する事が予想されている。
本研究では、すでに複数機関で実施されている微小地震観測や宇宙技術(GNSS観測)を用いた山体膨張監視に加え、原理的にマグマの上昇を捉える事が可能な電磁気学的データに高度情報処理技術を適用して、富士山監視の精度向上に資するものである。
また、電磁気観測以外にも、本NPOグループで実施している火山性低周波地震の高度検出結果や、富士山頂および五合目での火山ガス観測データ、山梨県の富士山科学研究所が実施している重力や地下水観測データ等を常時に閲覧・比較できる一般向けのポータルサイトを構築する。」
というものです。

スクリーンショット 2024-03-01 14.52.21

地質年代的に「若い」火山である富士山はいつ噴火してもおかしくないと言われますが、その監視体制は決して万全なものとは言えません。たとえば、マグマの上昇を捉える地磁気の観測網についても、現在、本NPO法人が2020年に設置した太郎坊と東大地震研が設置した2地点のみとなっています。

また、本研究ではNPO内部の研究として行われてきたCO2,SO2, などの火山ガス観測や山頂カメラによる監視とも連携して更に火山監視のレベルを上げることも期待されます。

その他、研究の詳しい内容は、3月10日に行われる「第17回成果報告会」でも発表される予定です。
多くの方のご来聴をお待ちしています。

第17回成果報告会の詳細は第17回成果報告会特設ページをご覧ください。
聴講参加ご希望の方は、「第17回成果報告会 聴講参加申込フォーム」よりお申し込みください。


(広報委員会)

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以下に、廣瀬勝己理事(富士山環境研究センター第一研究部長)の投稿ブログをご紹介します。

入り口看板
 NPO東京事務所の入口には2つのプレートが取り付けられています

2019年にNPO内部に設立した富士山環境研究センターは、
発足後5年を迎え新しい発展に向けて活動しています。
2020年以来のコロナ禍の中、社会は正常化に向かっています。
研究センターにも自立した研究活動が求められています。
そのためには、研究費が必要であり、文科省の科研費にも応募してきましたが、
残念ながら昨年応募した分は不採択となり、
研究センターとして独自の研究を実施する段階に至っていません。

本年も、2件応募して、研究センターの基盤の確立を目指しています。
ただし、所属の研究員の努力で、昨年度は
原著論文6本、総説等5本、12の学会発表、成書2冊と
一定の成果をだすことができました。

富士山の環境科学研究とは直接の関係はありませんが、
2023年9月17-22日にスペイン、セビリア行われたEnvira2023
(第7回環境放射能に関する国際集会)で、
本NPOの富士山環境研究センターの廣瀬勝己・第一研究部長が
ENVIRA2023awardを受賞しました。(受賞講演の演題を下記に示します)

ppt タイトル
    
また、三浦フェローを含むグループが
「Detection of Ship Fuel Sulfur Contents in Exhaust Plumes at the Kanmon Straits, Japan, before and after the Global Sulfur Limit 2020」
という題目の論文で2023年度大気環境学会AJAE論文賞を授賞しています。

スクリーンショット 2023-09-19 14.43.15
 速水教授の代理で論文賞を伊豆田猛学会長から受け取る森樹大慶応大学助教

富士山環境研究センターでは独自の資金が無いため、
研究を続けたいという意欲のある方々に場所を提供して、
科研費の応募を可能にする等の便宜を提供しています。
研究題目については研究者の自主性を尊重していますが、
主に富士山を研究のフィールドにした大気化学、大気電気、火山噴火予知など
幅広い分野に亘っています。
現在は、ウェブを利用してセミナー・講習会等を実施して、研究活動の活性化を図っています。
今後、継続的に独自資金が得られるようになれば、若い研究者も参加が可能となり、
研究が一層発展できるのではないかと願っています。(文責:廣瀬勝己)

研究センタースペース
 冬季の研究センタースペース(富士山頂で夏期観測が行われている間は測定器の組み立て、運搬用の荷物、時には山頂から戻った荷物で一杯になることもあります)

富士山環境研究センターのこれからの発展が楽しみです。
(広報委員会)

認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。


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