太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

カテゴリ: 大気科学


 TBSラジオ 「森本毅郎・スタンバイ! | Webサイトより

2026年1月5日(月)AM6:30~放送
TBSラジオ番組「森本毅郎・スタンバイ!」内「現場にアタック」のコーナーに
「海洋じゃない?大気中マイクロプラスチックを知ってますか?」というタイトルで
大河内副理事長が出演いたしました。

「今日は、綺麗な青空が広がって…」と
軽快なテンポから始まり
海洋、大気マイクロプラスチックの話や
解決策の一つとして期待される樹木「早生桐(そうせいきり)」
など、情報が盛り沢山の内容です。
が、なんと!
6分50秒でわかりやすく紹介されています。



このラジオを聴いて
今年も頑張るぞ!と元気を頂きました。

お時間ありましたら、ぜひお聴きください。

(広報委員会)
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— ニューオリンズから発信する、旧富士山測候所での観測で得られた雷起源高エネルギー大気研究の発表 —

2025年、アメリカ・ルイジアナ州ニューオリンズで開催された、アメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union: AGU)秋季大会(Fall Meeting)に、富士山測候所を活用する会の雷チームのメンバーが多数参加しました。

AGU秋季大会は、地球科学分野において毎年行われる世界最大級の連合学会であり、地球科学の非常に幅広い分野を網羅しています。アメリカ国内で開催される学会ではありますが、毎年、世界中から2万人規模の研究者・学生・技術者が集い、最新の研究成果について活発な議論が行われます。



今回の会場となったニューオリンズのコンベンションセンターは非常に広大で、会期中は早朝から夕方まで多くの研究者が行き交い、国や分野を越えた交流が自然に生まれる、活気に満ちた空間となっていました。

AGU秋季大会では、国・地域別の参加者数について公式な統計は公表されていませんが、日本は例年、アメリカ、中国、韓国などと並ぶ主要な参加国の一つとされています。今回の大会でも、日本の大学・研究機関に所属する研究者の姿が多く見られ、日本の地球科学研究が国際的に高い存在感を持っていることを実感しました。

今回のAGU秋季大会では、富士山測候所を活用する雷研究チームとして、富士山に関連する研究発表が計5件行われました。以下に、その概要を紹介します。



① 富士山におけるガンマ線グローと相対論的電子雪崩

カリフォルニア大学サンタクルーズ校 David Smith 教授のもとで、学部の卒業研究として行われた Isabell Kim さんの発表です。現在、彼女は他大学の修士課程で引き続き地球科学を研究しています。

研究内容は、富士山頂で観測されたガンマ線グローを対象に、相対論的電子雪崩(Relativistic Runaway Electron Avalanches: RREA)の規模を推定するものです。富士山測候所に設置されたガンマ線検出器の高時間分解能データを用いることで、個々の電子雪崩の特性に迫る解析が行われ、従来モデルとの比較を通じて、雷雲内での電子加速過程に新たな制約が与えられました。富士山という高標高環境ならではの観測成果にも注目が集まりました。

なお、彼女はポスター発表を行う若手研究者に与えられる5分間の口頭発表枠でも、本研究成果を発表しました。





② 雷・ガンマ線・大気化学の統合観測

次は、富士山測候所を活用する会 副理事長である鴨川仁(静岡県立大学 特任教授)による発表です。

ガンマ線、ロゴスキーコイルによる落雷電流測定、電磁波(VLF)、大気電場に加え、同じく夏期観測で行われる NOx や O₃ などの大気化学成分を同時に観測することで、雷放電前後の物理・化学過程を包括的に捉えた貴重な事例が紹介されました。富士山測候所が分野横断型の観測拠点として機能していることを強く印象づける発表となりました。



③ 雷放電における高エネルギー放射研究の総括

カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の David Smith 教授による総括的な口頭発表では、雷に伴う地上ガンマ線フラッシュ(TGF)やガンマ線グローの研究動向が、世界各地の観測事例を交えて俯瞰的に紹介されました。

発表の中では、富士山測候所で得られてきた観測成果も重要な位置を占めており、富士山が極めて近距離で雷に伴う高エネルギー現象を捉えられる希少な観測拠点であることが改めて強調されました。



④ 雷ステップ・アタッチメント過程におけるX線放射

次は、Smith 教授のもとで博士号取得を目指している Ronaldo Rodriguez さんの口頭発表です。

雷放電の中でも特に観測が困難なリーダ進展(stepping)およびアタッチメント過程に伴うX線放射を、富士山頂近傍に設置された THOR 検出システムで捉えた研究が発表されました。

NaI 検出器とプラスチックシンチレータの応答差を利用した新しい解析手法により、X線スペクトルの制約が試みられ、雷放電直前・直後の電子加速過程に迫る成果が示されました。



⑤ デジタル線量計 IRIS の開発と富士山での展開

最後に、Natalie Smith さんによる新型デジタル線量計 IRIS(Intense Radiation Integration Sensor)の開発と初期運用に関する発表が行われました。

IRIS は、従来の高感度検出器とは異なり、感度をあえて抑えた設計によって、極めて強い放射線環境でも飽和せずに測定できることを特徴としています。富士山を含む複数の観測拠点での展開実績が報告され、雷研究における計測技術の新たな可能性が示されました。



以上の一連の研究には、富士山環境研究センターの藤原博伸 研究員、安本 勝 研究員をはじめとした、富士山測候所を活用する会に参画する多くの研究者が、観測・解析の両面で大きく関わっています。

富士山という過酷な環境下での観測機器の維持・運用、長期にわたるデータ蓄積は、現地に根ざした継続的な取り組みなくしては成り立ちません。今回の成果は、こうした現場力と連携体制に支えられたものです。

学会発表を終えた後は、ニューオリンズの街でジャズの夜を楽しみながら、研究交流を深めました。この場には、静岡県立大学、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者に加え、富士山周辺の落雷電波波形データを継続的に観測している岐阜大学の 准教授も参加しました。

公式セッション外でのこうした交流は、次の観測や共同研究につながる大切な時間でもあります。人と人とのつながりが、研究を前に進める原動力であることを改めて実感しました。









今回のAGU秋季大会への参加を通じて、富士山測候所を核とした雷・高エネルギー大気研究が、国際的な研究ネットワークの中で確かな位置を占めていることを改めて確認することができました。

富士山測候所を活用する会は、今後も富士山環境研究センターをはじめとする関係機関、国内外の研究者との連携を大切にしながら、富士山という唯一無二の観測フィールドを活かした研究活動を継続・発展させていきます。

(広報委員会)
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-中山さん参加者

12月14日は冷たい雨の降る日曜日でしたが、東京事務所は暖かく、事務所で用意されていた温かいお茶と事務局お勧めの温かい唐揚げ弁当で、軽いお昼をとりながら下記のプログラムでスタートしました。事務所に5人、zoomで4人参加のハイブリッド会議です。
プログラム

畠山史郎・富士山環境研究センター(LERMF)長の司会で、George Lin 教授の講演が始まると、すぐにその熱気に圧倒されてゆきました。

George Lin スライド表紙

台湾の中央部にそびえる鹿林山(標高2,862m)。ここに、地球規模の大気の流れを監視する最前線基地、LABS(Lulin  Atmospherid Baseline Station)があります。
道も電気もなかった30年以上前から、大学が国立公園から土地を借りて整備し、行政機関に認めさせて、最終的に資金援助を得て、2006年に観測所を開設した苦労話に始まり、観測所までの820mの道のりは、今でも徒歩。重いガスタンクなどの機材は、「若くて屈強な」地元の登山家たちに運搬を依頼しているといいます。このような地道な努力が、日々の観測を支えていること。

鹿林山は、東南アジア諸国などから汚染大気の長距離輸送を観測するのに、地理的に理想的な場所に位置しおり、世界中の研究機関と協力し、地球の空気を監視する重要な拠点となっていること。

研究を支えているのは、科学への情熱と世代を超えた人のつながりであること。かつて観測所の設立を手伝った博士課程の学生が、20年後に台湾の環境大臣になったエピソードを、写真を見せながら誇らしげに語られました。
「若い世代は大切にしなければならない。彼らが将来、大臣になるかもしれないからね。」
と述べられたのが印象的でした。

次は、富士山の代表的な研究として、まず最近注目されている早稲田大学大河内副理事長グループの大気中マイクロプラスチックの話をWANG博士が話しました。

wangさんタイトル

海洋のマイクロプラスチック汚染については近年問題になっています。もしそれが雲水の中に含まれていることを、早稲田大学大河内博研究グループの王さんらが報告し世界に衝撃を与えました。
これらの微小なプラスチック粒子は、気流に乗って運ばれてきたと考えられています。

特に2024年に観測された高い濃度は東南アジアからの大気輸送が原因であり、また劣化の激しい粒子は中国や東南アジアからの気団と関連して検出されていました。
さらに、紫外線などで劣化したプラスチックは、親水性であることがわかり、雲の発生や成長に影響を与える「核」として働く可能性を示唆しています。この発見は、気候変動との関連も視野に入れた、非常に重要な研究テーマとなっています。

加藤さんタイトル

続いて、NPOスタート時から継続している加藤俊吾理事によるCO,O3,SO2の濃度に関する報告がありました。富士山頂と、南東1,300mの山麓、太郎坊での長期的な観測からは、興味深い謎が浮かび上がっています。中国など大陸からの汚染物質の排出削減努力により、一酸化炭素(CO)の濃度は明らかに減少傾向にあります。しかし、光化学スモッグの原因物質でもあるオゾン(O3)の濃度には、ほとんど変化が見られないのです。この謎を解き明かすため、今も研究が続けられています。

+村田さんタイトル

微生物・氷晶核(INP)の研究者である村田浩太郎理事は、市販の装置がないため、「SNICS」と名付けた独自の測定装置を自作して観測に挑みました。
その結果、富士山では日中にINPの濃度が高まることが分かりました。これは、「谷風」が、地表の物質を山頂まで運んでいるためと考えられます。驚くべきことに、富士山の山肌の砂ぼこりや、山麓の森林から舞い上がった微生物が、雨を降らせる重要なきっかけになっている可能性が示され、山そのものが、天気を生み出す巨大な装置として機能している可能性を考えています。

次に、本NPOの活動の中で、新しく開発されて、「新しい雷測定技術」について、安本勝LERMF研究員らの報告がありましたが、この講演は土器屋由紀子理事が導入だけを英語で話し、質問を受ける形にしました。
安本さんタイトル+

富士山測候所の建物を「フランクリンの凧」に7kmの埋設線を「タコ糸」に模して、「安本装置」はライデン瓶に当たるという発想で、作成された装置です。
この画期的な方法により、雷をその性質ごとに4つの異なるタイプ(「プラス/マイナスの電気」と「雲から地上へ/地上から雲へ」の組み合わせ)に精密に分類できるようになりました。この研究は、雷の発生メカニズムの解明だけでなく、雷による被害を減らすことにも貢献すると期待されます。

土器屋タイトル

最後に、土器屋理事が2017年の国際シンポジウムACPM2017以降、コロナ禍による財政的な危機でNPOは存続の危機に直面したこと、研究者たちが立ち上げたクラウドファンディングには、目標額の2倍を超える支援が集まり、翌年からはコロナに注意しながら活動を再開し、ギリギリで生き延びていることなどを話しました。しかし、何とか生き延びて、富士山の仕事が世界的にも注目され始めていますが、これまで活動してきた会員や理事の高齢化、若手の超多忙、全体的なマンパワー不足が目立つようになってきており、本NPOも一つの分岐点に来ているのかもしれない現実もあります。以前引用した立平良三・元気象庁長官の「日本人が富士山に対して抱く独特の想い」を再び引用して望みを託していると締めくくりました。

元NOAA,マウナロア観測所のRuss Schnell 博士が米国コロラド州からZoomで特別参加してくださいましたが、そこで、衝撃的な現実を知りました。
マウナロア観測所の火山被害は、公費によって修復されますが、NOAAの全球監視部門は、若手科学者の全員を失いました。彼らは全員解雇され、年長の科学者のほとんどは早期退職を求められているとのこと。政治の風向きひとつで、長年の研究基盤が揺らぐことがあるのです。このような不安定な状況下でも、地球の未来のために観測を続けようとする科学者たちの使命感で何とか生き延びようとしているとのことです。

これから、「冬の時代」を迎えそうな「観測研究」をどうやって続けてゆくか改めて気を引き締めるような集まりでもありました。

(広報委員会)
 
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朝日新聞(デジタル版)より

2025年11月3日(月)に
「富士山頂の雲からプラスチック 「見えない汚染」が地球覆う、対策は」
https://www.asahi.com/articles/ASTBZ3RT2TBZUTFL00LM.html
という記事が朝日新聞(デジタル版)にて公開されました。
富士山頂や北極の大気中に目に見えないほど小さなプラスチックが舞っている。人間活動の影響が都市や町だけでなく、地球規模に広がり、制御が利かなくなりつつある。このプラスチックはどこから来るのか、メカニズムや影響の一端が少しずつ明らかになり始めている。
2016年、パリで雨水から繊維状のプラスチックが検出されたという報告が発表され、大気中に浮遊するプラスチックの存在が示された。その後、世界各地で調査が進み、大気中プラの実情が見えつつある。
こちらは、有料記事となっております。
ご興味ある方は下記リンクよりご覧ください。



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浮遊プラごみ、地球循環 富士山頂の微粒子 東南アジア由来か

高橋由衣記者の記事が、8月14日付け毎日新聞のニュースサイト(有料記事)に掲載されています。
「プラスチックごみに終着点はない。形を変えて、地球の表面をぐるぐると循環している」。早稲田大の大河内博教授(環境化学)はそう語る。
とはじまります。
浮遊するMPの微粒子は国境を越える。それを裏付けたのが大河内さんらの研究だ。地表からの影響を受けにくい富士山頂(標高3776メートル)の雲からMPを検出したのだ。
海洋プラスチックとの比較、富士山頂の積雪での発見の経緯、呼吸器から吸収されるおそれ、今後の問題など、詳細なわかりやすい解説があり、


 富士山頂で雲水を採取する様子 大河内博副理事長撮影
「海のプラごみを減らす方策が取れれば大気中のMPも減るはず。ただし食品衛生 や医療のようにプラスチックが無くなると困る分野もある。環境に流出しやすいプラ製品など、できるところから使用量を減らしたり別の素材に置き換えたりしていく必要がある」と訴える。
と結ばれています。

詳しくは毎日新聞のニュースサイトを御覧ください。

(広報委員会)
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